3種類のBMWを融合 110km/hでの高速道路も快適 ブリストル400 ドロップヘッド・クーペ(2)

公開 : 2024.01.27 17:46

贅沢感を醸しつつ親しみやすい個性

英国からアメリカ・ロングアイランドへ運ばれた400 ドロップヘッド・クーペを、10年後にロバート・シラーマン氏がオークションで落札。海岸で過ごす、バケーション用に乗られていた。

1988年にブロウがクルマの所在を知り、シラーマンへ連絡。手放したことを悔いていた彼は願い出て、1万5000ポンドで買い戻した。その後、入念にレストア。21世紀に入ってからも、レストアとアップデートを受けている。

ブリストル400 ドロップヘッド・クーペ・プロトタイプ(1947年/欧州仕様)
ブリストル400 ドロップヘッド・クーペ・プロトタイプ(1947年/欧州仕様)

現代の交通環境へ耐えるよう、直列6気筒エンジンは後期型のパワフルな100Aユニットへ置き換えられ、トランスミッションもブリストル403用へ交換。ブレーキにはサーボが追加され、ディスク化されている。ドアミラーなどもオリジナルではない。

とはいえ、贅沢感を醸しつつ親しみやすい、本来の個性はしっかり残る。ソフトトップを開いても閉じても、400 ドロップヘッド・クーペで遠くの目的地を悠々と目指せるだろう。戦後のクルマとして、目新しいポイントはないかもしれないが。

現在のオーナー、スティーブン・パーカー氏は、週末が来る度に運転しているそうだ。「76年も昔のクルマが、110km/hで高速道路を快適に走るんです。それには毎回驚かされますよ」。と話す。

幸せな気持ちを生むドロップヘッド・クーペ

ところが、保守的なブリストル・エアロプレーン(BA)社の姿勢に不満を高めていったハロルドは、1946年11月に400のシャシーをイタリアへ送付。カロッツェリアのトゥーリング社とファリーナ社へ、モダンなスタイリングを提案するよう依頼した。

トゥーリング社は細い鋼管フレームにパネルを貼り付けた、スーパーレッジェーラ構造のクーペを製作。後に401として販売された。ファリーナ社はアルファ・ロメオランチアにも似たコンバーチブルを製作するが、冷ややかに受け止められたようだ。

ブリストル400 ドロップヘッド・クーペ・プロトタイプ(1947年/欧州仕様)
ブリストル400 ドロップヘッド・クーペ・プロトタイプ(1947年/欧州仕様)

フレイザー・ナッシュ側とBA社の関係は改善することなく、協力体制は解消。ブリストル・カーズは単独ブランドとして歩むことになり、1950年までに425台の400 サルーンを提供した。他方、ハロルドは自動車販売へ事業を戻している。

400 ドロップヘッド・クーペが、量産されることはなかった。1949年の402 カブリオレまで、ソフトトップのブリストルが作られることもなかった。

それでも、快適で実用的で、幸せな気持ちを生むことを、短時間の試乗でも筆者は確かめることができた。実らなかった過去が、とても惜しまれるプロトタイプだ。

ブリストル400 ドロップヘッド・クーペ・プロトタイプ(1947年/欧州仕様)のスペック

英国価格:1500ポンド(新車時)/20万ポンド(約3700万円/現在)
生産数:2台
全長:4648mm
全幅:1625mm
全高:−mm
最高速度:151km/h
0-97km/h加速:14.7秒
燃費:7.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1181kg
パワートレイン:直列6気筒1971cc 自然吸気・プッシュロッド
使用燃料:ガソリン
最高出力:81ps/4200rpm
最大トルク:14.6kg-m/3500rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    エマ・ウッドコック

    Emma Woodcock

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ブリストル400 ドロップヘッド・クーペの前後関係

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