アルピナB5 GT ツーリングへ試乗 創業者が「最後に見届けた」高速ワゴン 感服の滑沢さ

公開 : 2024.02.06 19:05

豊かなトルク 中毒性のあるエネルギー放出

大径ホイールに肉薄なタイヤを履き、大人4名と荷物を載せた状態で、328km/hまで許容する能力をB5 GT ツーリングは備える。表面が荒れた路面では、予想よりロードノイズが大きい。しかし、乗り心地や振動といった外界との隔離性は、Sクラスへ遠からず。

アルピナ・オリジナルのアダプティブダンパー・モード、コンフォートプラスも効果的。姿勢制御は、一般道では少し緩すぎるように思えるものの、高速道路では理想的に引き締まる。

アルピナB5 GT ツーリング(英国仕様)
アルピナB5 GT ツーリング(英国仕様)

安楽な長距離走行に貢献しているのが、豊かなトルク。殆どの加速で、シフトダウンする必要がない。8本のシリンダーの燃焼音を遠くで奏でながら、まるで1速リダクションギアのバッテリーEVのように、シームレスに速度が増していく。

もちろん、シフトパドルを弾いたり、スポーティなドライブモードを選べば、サウンドを一層堪能できる。V8エンジンは、中回転域で最高の能力を発揮する。アクセルペダルを数度傾ければ、大排気量ツインターボらしい、中毒性のあるエネルギー放出が始まる。

B5 GT ツーリングの車重は2080kgあり、サルーンの1980kgより100kg重い。M5 CSより255kgも重いが、86.5kg-mのトルクを持ってすれば、殆ど誤差の範囲。その加速は、超音速へ届くような勢いだ。

より落ち着いた最高の高速ワゴン

それ以上に感服といえるのが、一般道での滑沢さ。通常のB5とのシャシーの違いは、強化されたバンプストッパーとバルクヘッドのほか、ドレクスラー社製の機械式LSDを搭載する程度。低い気温が影響していたことも考えられるが、遊び心に溢れている。

熱狂的な旋回性や、ステアリングの圧倒的な精度、引き締まった姿勢制御という点では、M5 CSに届いていない。しかし、路面を問わない乗り心地や穏やかなマナーを踏まえれば、身のこなしは秀抜だ。

アルピナB5 GT ツーリング(英国仕様)
アルピナB5 GT ツーリング(英国仕様)

アクセルペダルの加減で、自在にコーナリングラインを調整していける。B5 GTでは、ツーリングのリアタイヤの接地面積が、サルーンより小さく設定された事実も興味深い。

新しいG60型のM5に、ツーリングが登場することは明らかになっている。だが、ボディサイズは大きく、パワートレインが重く複雑なプラグイン・ハイブリッドになることも判明している。従来のように好ましいMモデルになるのかは、不透明だ。

実用性は必要でも、ポルシェ911のように機敏で意欲的な走りを求める人は、M3 ツーリングを好むかもしれない。だが、より落ち着いた個性を求める人にとって、B5 GT ツーリングは最高の高速ワゴンになるだろう。既に完売状態ではあるけれど。

アルピナB5 GT ツーリング(英国仕様)のスペック

英国価格:12万7900ポンド(約2379万円)
全長:4978mm
全幅:1868mm
全高:1466mm
最高速度:328km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:8.5km/L
CO2排出量:265g/km
車両重量:2080kg
パワートレイン:V型8気筒4395ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:634ps/5500-6500rpm
最大トルク:86.5kg-m/3500-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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