巨体なのに…… 新型アルピナXB7試乗 アルピナ・マジックあるか

公開 : 2023.08.02 17:45  更新 : 2023.08.02 20:11

マイナーチェンジしたBMWアルピナXB7の試乗記です。アルピナ・マジックはあるか? 最大モデルに迫ります。

NからSへ換装 高まった完成度

初っ端から言い訳っぽくなってしまうのだが、昨年10月の筆者のBMWアルピナXB7のレポートは、個人的にはスッキリと咀嚼できていない。

試乗会の会場である逗子マリーナから走りはじめてすぐ渋滞にはまり、高速道路の短い区間をビュッと走っただけで時間終了。結論としては「アルピナらしいシャシーファスター」、「でもSUVらしくカジュアル」と結んでいる。実際にそう感じたのだけれど、もっと乗り込めたなら違う表現もあったのではないか? と思わずにいられない。

BMWアルピナXB7
BMWアルピナXB7

あれから8か月後、マイナーチェンジを経てヘッドランプが上下2段、いわゆる「ダブルフェイス」となったBMWアルピナXB7に軽井沢で試乗する機会に恵まれた。軽井沢なら満足のいく試乗ができそうだ。

今回の試乗が楽しみな理由はもう1つある。ベースモデルとなったBMW X7のマイチェン前と後の違いが目覚ましいものだったからである。

後期型の識別ポイントは「顔」だが、最も重要な変更点はパワートレインだ。なんとV8エンジンがN63からS68に変更されている! という事実をもっとわかりやすく表現するならば「エンジンが標準的なBMW用からM謹製に変わっている」ということ。

もちろんXB7でもこれは同じだ。アルピナは現行のB3で史上初めてBMW M用エンジンを搭載し躍動感がプラスされている。後期型XB7にも同じ効果が表れているだろうか?

直線でも山道でも ペースを選ばず輝く個性

新型XB7に乗り込んですぐに「前と違う!」と感じたのは加速だった。スロットルの動きに寸分も遅れることなく、ドンッと加速する。S68ユニットの最高出力は621psなので前期型が搭載していたN63と同一。

だが48Vのマイルドハイブリッドが追加されており、加速しはじめのターボラグの段差をモーターの12psがうまく埋めているに違いない。もう1つ、8速ATのダイレクト感も増しており、加速をより鋭くキレのいいものにしている。

V8エンジンがN63からS68に変更されている! という事実をもっとわかりやすく表現するならば「エンジンが標準的なBMW用からM謹製に変わっている」ということ。
V8エンジンがN63からS68に変更されている! という事実をもっとわかりやすく表現するならば「エンジンが標準的なBMW用からM謹製に変わっている」ということ。

中軽井沢から鬼押し出しへと続く峠道では、瞬発力のあるパワートレインに対するシャシーも優れていることがわかった。おそらくエアサス自体は前期型と同じものだが、以前よりもロールやピッチングがはっきりと抑え込まれている。抑え込むと乗員の頭部に掛かるGが強くなり我慢を強いられたりするものだが、それがないことも素晴らしい。

ロールによる倒れ込みを待たず、クルマが前へ前へと出ていく感じ。XB7の駆動はAWDなのだが、コーナーからの立ち上がりではリア2輪に掛かったパワーが突出して感じられる点も気持ちがいい。リアの電制デフによるベクタリングもXB7をよく曲げてくれる。

スポーティなSUVの多くはスタビリティをAWD任せにすることでドライブフィールを濁らせてしまっているものが多い。だがアルピナは2.7t近い車重と真摯に向き合い、ファインチューンの蓄積により問題を解決している。

「そうそう、アルピナってコレだよね!」。久しぶりにSUVで、山道のドライビングを堪能することができた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。

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