「印象ダウン」なATと快適性 新名称で再出発の韓国ブランド KGMトーレスへ試乗

公開 : 2024.03.27 19:05

アラが見えてくる内装 伸び悩む燃費

しかし、落ち着いて観察するとアラも見えてくる。リムが細いステアリングホイールの中央には、古いサンヨンのロゴが残ったまま。合成皮革は、特に感触に優れるわけではない。シートの座面はフラットで、身体のサポート性は今ひとつだ。

プラスティック製の部品は、仕上げが良くない。実際に押せるハードボタン類は、3万7995ポンド(約718万円)のクルマとしては、ソリッド感が乏しい。

KGMトーレス(英国仕様)
KGMトーレス(英国仕様)

インフォテインメント・システムはメニュー構造を理解しやすく、グラフィックも見やすいものの、稀に反応が遅い場面があった。ワイヤレスでの、スマートフォンとのミラーリングにも対応はしていない。

警告音も耳についた。荷物を取るため、エンジンを掛けたまま降りても鳴るし、走行中は制限速度が変わる度に鳴る。とはいえ、これは欧州で施行される新しい安全規制に沿ったもの。トーレスの場合、簡単にオフにできれば気に障ることはないのだが。

パワートレインは、サンヨン時代から存在する、1.5L 4気筒ターボ。最高出力163ps、最大トルク28.5kg-mを発揮する。トルクはこのクラスとしては優秀といえ、絶妙に調整された特性もあって、想像するほど遅くはない。

ただし、実環境での燃費は伸び悩む。カタログ値では11.8km/Lが主張されているものの、条件の良い高速道路の巡航でも、10.0km/Lを超えることはなかった。

印象を下げるATのマナーと乗り心地

この燃費を生んでいる理由の1つが、シフトアップ前に高回転域まで引っ張る傾向が強い、6速ATのマナー。7速目を追加し、110km/hでの走行時に2100rpmを切るようにもできれば、改善できるのではないかと思う。

鋭い加速を求めて、アクセルペダルを踏み込むと、キックダウンの反応も鈍い。DからRへ切り替えると、驚くほどの変速ショックも伴う。アイシン社製だというが。

KGMトーレス(英国仕様)
KGMトーレス(英国仕様)

乗り心地は、トーレスの印象を下げるもう1つの部分。サスペンションのチューニングが甘いのか、明らかに前時代のオフローダー的。英国の一般道では、落ち着きを保つことが難しいようだ。

日常的な速度域では、不自然な硬さが目立ち、振動が収まらない。フラットなシートはクッションが良くなく、快適性をアシストできていない。KGMのイメージ向上のため、優先的に取り組むべき項目だったのでは。

英国価格が5000ポンド(約95万円)安ければ、荒削りなサスペンションやパワートレインを許せるかもしれない。しかし現在の設定では、納得できる水準とはいいにくい。

検討候補に加える価値がない、というわけではない。四輪駆動仕様やバッテリーEV版なら、より高い魅力を備えている可能性はある。だが、前輪駆動のトーレスをお考えなら、納車後に後悔しないよう、自ら印象を確かめた方が賢明だろう。

◯:このセグメントでは存在感を放つスタイリング 広大な荷室
△:磨き込みの足りないシャシー 洗練性と効率性で劣るパワートレイン

KGMトーレス(英国仕様)のスペック

英国価格:3万7995ポンド(約718万円)
全長:4700mm
全幅:1890mm
全高:1720mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:10.8秒
燃費:11.8km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1528kg
パワートレイン:直列4気筒1497cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:163ps
最大トルク:28.5kg-m
ギアボックス:6速オートマティック(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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