レクサスRC F

公開 : 2014.12.12 23:50  更新 : 2017.05.29 19:24

個人的には仰々しいスピンドル・グリルに好感は持てないが、全般的なルックスは美しく迫力があることからも、なかなかの好印象。インテリアの高級感や装備の多さ、美しい仕上げや4人の大人にとって十分なスペースもまた加点ポイントだ。シートの形状やルックスも素晴らしい一方、ステアリングの立て付け位置は残念ながら万人に響くものではない。

ジャガーF-タイプの芝居じみたエンジン始動音がない分、上品な印象もある。ただし価格帯を考えれば、上品と凡庸は紙一重のところにあるので、静けさが好きな人は好き、嫌いなひとは退屈と感じるかもしれない。

サスペンションはハイ-パフォーマンス・グレードといえども柔らかい類。路面の凹凸は非常に巧くやり過ごし、キャッツアイや大きめな継ぎ目を踏み越えた時のみほんの僅かに衝撃を伝えることがあるが、それでも快適性は高い。高速域では一貫してボディの上下動をキープするが、筆者はもう少し鋭さがあっても良いのではないかともおもう。リバウンド制御もまだまだ良くなるはずだ。

ドライブ・モードが4つ(エコ、ノーマル、スポーツS、スポーツS+)、スタビリティ・コントロール・モードが4つ(ノーマル、スポーツ、オフ、エキスパート)、トランスミッションが2つ(オートマティックとパドルによるマニュアル操作)、さらにトルク・ベクトリング・デフをオプションで選べば3つ(スタンダード、スラローム、トラック)と選択肢が手に負えないほどあるため、使いこなせれば、絶対に退屈することもなさそうだ。

エコ・モードではV8エンジンがアトキンソン・サイクルに転じガソリンを節約する。本当?とおもったが、本当である。けれどもスポーツSモードの方がずっと好印象だ。スタビリティ・コントロールはエキスパートがベスト。デフはスタンダード・モード時のマナーが一番リニアに感じられた。もしかするとスラローム・モードを公道で使用した場合、やや大げさに感じる向きもあるかもしれない。

ステアリングの重みは適切でフィードバックは多くないが、かといって決定的に不足してもいない。またコーナーの入り口ではフラットな姿勢を維持し、安定感が失われることはない。コーナリング・バランスは均整を保ち、ミド-コーナーではアンダーステアがわずかに顔を出す。ただしどの挙動もコントロール不可の状態に転じることはなく、自らの手で手懐けることができる。

少なくとも5000rpmあたりから上では驚くほど速く、運転していてドキドキする頻度が格段に増す。アウディの4.2ℓ V8よりも活き活きしている印象だ。低速域の静けさと落ち着きと、高速域の非合法的な炸裂感の両方を併せ持つこのユニットは確実に新たなファンをつくるに違いない。

オートマティック・モード時のキックダウンは常にぎこちないものの、ハード・ブレーキング時のパドルによるダウンシフトはとてもうまい。これによってV8ユニットの美味しい回転域を常に選びだすことができるのもいい。

ジャガーF-タイプV6 SやBMW M4のほうがパワートレインのレスポンスは機敏であるが、これら2台が燃費性能を追い求めるところを、一気に3段くらいギアを落として自然な楽しみを与えることを頑なに貫いていることもまたいい。

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