ただし完璧とまでは断言できない。3気筒にスワップしたことのトレードオフとして、たかい回転域に達した際に生じるエンジン・ノイズがその一因だ。残念ながらフォード製1.0ℓ 3気筒エコブーストほどの完成度ではない。

動力性能もまた、可もなく不可もなしといったところ。ステアリングは軽すぎるうえに、フィールと呼べるようなものは皆無だ。乗り心地も大方はスムーズであるものの、バンプを踏んだ際に前後アクスルは一貫性に欠ける感覚をもたらす。

一方、鼻先におさまるエンジンが軽くなったおかげで、操舵フィールはいくぶんシャープになった印象。ただしこちらもまた、ライバルであるミニに代表するドライバー参加型のドキドキするような味わいに欠けている。

その反面引き続きキャビンには、目で見ても手で触れても満足できる高級感がある。標準装備の豊富さもまた、アダムの長所として健在だ。

たくさんの組み合わせからカスタマイズできる内外装用オプションも、最新モデルならではの楽しさといえるだろう。

■「買い」か?

アダムをはじめとするミニやフィアット500など、ファッション性の高いシティ・カーは、それぞれのもたらす運転感覚よりもカスタマイズ性の高さが最優先だったりするもの。

しかし、どれほどルックスが良かったとしても、あまりに動力性能が物足りなければ、カスタマーに受け入れられないことだってある。先代のアダムがいい例だ。

1.0ℓ3気筒ユニットに載せ替えることで、これまで苦い思いをしてきたアダムは、比べ物にならないほど優れた動力性能を確保していることを、強く感じた試乗となった。

(マーク・ティショー)

ヴォクゾール・アダム 1.0T ジャム

価格	£13.455(242万円)
最高速度	195km/h
0-100km/h加速	9.9秒
燃費	20.4km/ℓ
CO2排出量	114g/km
乾燥重量	1063kg
エンジン	直列3気筒998cc
最高出力	115ps/4000rpm
最大トルク	17.3kg-m/1800-4500rpm
ギアボックス	6速マニュアル