シボレー・コルベットZ06

公開 : 2015.01.15 23:50  更新 : 2017.05.29 18:36

電制LSDはZ06には標準で組み合わされ、0.1秒単位で常時調整される油圧のアジャスタブル・クラッチが動力を伝達する。e-デフのおかげで、制動時にデフが完全にオープンになることもあり、並外れた安定感を得るに至っている。

Z06の標準ブレーキは両アクスルともに2ピース・ローターを用い、前/6ピストン、後/4ピストンのアルミニウム製キャリパーを組み合わせる。ちなみにオプションのZ07パッケージならばカーボンセラミック製のシステムに置き換わり、トータルで10.4kgの軽量化に貢献する。

標準、オプションのシステムともにブレンボから供給を受け、特にサーキットにおける制動力には目を見張るものがある。よって、ブレーキング・テクニックを必要とするネバダ州のスプリング・マウンテン・サーキットではその恩恵を授かることが多かった。

ウェザー、エコ、ツアー、スポーツ、トラック、またトラックのなかから路面状況に合わせた自動ドライブ・モードを、センター・コンソール上のダイアルから選ぶことが可能。同クラスのスーパーカーから考えると十分すぎるほどの組み合わせではないだろうか。

走行した際のデータを遠隔測定して収集するパフォーマンス・データ・レコーダーはコスワース製となり、このデータから映像を構築し、走行後に詳しく分析することも可能だ。

カーボン・ルーフを外した際の剛性は、先代のハード・トップ版Z06よりも20%高まっている。コルベットいわくシャシー単体の強靭さは60%増しになり、アルミニウム製フレームは、ケンタッキー州のボウリング・グリーンで内製するC7.Rル・マン・レーサーのそれと基本コンポーネントを共有することにより同等の強度を獲得しているのだそうだ。

ミシュラン製パイロット・スポーツ・ランフラット・タイヤはZ06の専用品。コルベットの基準車のタイヤと比べるとフロントの幅が38mm、リアが50mmワイドになる。またフロント・フェンダーが合計56mm、リアが80mmも大きくなっており、横幅はトータルで2mちかい。

ボディ・ワークもZ06オリジナルとすることにより、付加的なダウンフォースを生み、冷却用のエアフローも一段と優れる。

ヘッド-アップ・ディスプレイは上位トリムであれば標準装備となり、見やすいバー・グラフ・タコメーターやG-メーターなどをトラック・モード時に表示することができる。

標準のコルベットに用意される、標準/オプションのシートはZ06にそのまま引き継がれているが、すでに高い完成度を誇るだけに前向きに捉えていい。どちらのシートも快適性とサポート性に優れ、6代目のゾッとする座り心地のシートに比べれば天国にいるかのようである。

Z07パッケージを選べばカーボン-セラミック・ブレーキ・パッケージが適用され、ミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2ランフラットや、アジャスタブル・リア・スポイラー、専用エアロが装着される。

またこちらのパッケージになると、スポイラーに透明の素材を用いるため、Z06では見えにくかったリアビューも見えやすくなる。後方視界は日常的に見ることが多いだけに、賢いチョイスだと感じる。

コックピットのほとんどはドライバーを中心に設計されており、裏を返せばパッセンジャーのことはあまり考えていない印象。用いる素材は同価格帯のスーパーカーとしては例外的に安っぽく、リアのバンパー・カバーでさえ頼りない素材を用いているのは手放しに受け入れられるものではない。

ステアリング・アシストは基準車と同じく電気制御がなされ、操舵感覚、フィードバックの絶対量ともに、これまでのコルベットからは信じられないほど良好だ。ただしポルシェ911やアストン・マーティンV8ヴァンテージの忠実性には一歩及んでいないことを書き加えておく。

オプション設定のカップ・タイヤはほぼレース・スペックといっていいほどで、多大なるグリップのおかげでデータ・レコーダーは1.2Gを示していた。限界まで冒険できる良きパートナーであることは間違いない。ただし限界を超えると、突如として破綻し始めるので注意が必要。このタイヤで単に速く走るだけならば申し分ないけれど、勇敢かつスキルのあるドライバーからすると、最高のスーパーカーというには躊躇われると感じた。

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

シボレーの人気画像