「楽園」へようこそ ピーターセン自動車博物館 超貴重なコレクションはクルマ好き必見

公開 : 2025.01.25 18:05

米ロサンゼルスにあるピーターセン自動車博物館は、貴重なクラシックカーやコンセプトカーの数々が美しく展示されている。なかでも地下にずらりと並べられた特別なコレクションは必見だ。

保存とエンタメ性の絶妙なバランス

初めてロサンゼルスに行くことを人に伝えると、決まって「ピーターセン自動車博物館に行くの?」と言われた。実際には筆者はまったく別の仕事のために派遣されたのだが、時間を作ってでも行かなければならないのは明らかだ。

建物の中に入らなくても、特別な場所であることが分かる。壮観なファサードを構成する流れるような鋼鉄のリボンが、中へ誘っているかのようだ。出版界の大物で、熱心な自動車コレクターでもあった創設者ロバート・E・ピーターセンの名を冠したこの博物館は、1994年に古いデパートを改装して開館し、2015年に大規模な改修工事が行われた。

ピーターセン自動車博物館
ピーターセン自動車博物館    ジャック・ハリソン

筆者が訪れた際には11の主要な展示会が行われていたが、見学ツアーのスタート地点である最上階で見ることができるのはそのうちの3つだけで、これから一体どれだけの時間をここで過ごすことになるのか見当もつかなかった。

すぐにわかるのは、展示のレイアウトが非常にうまくできていることだ。一般的な自動車博物館とは異なり、ひとつひとつの展示品にゆとりがあり、歩き回ってあらゆる角度から鑑賞することができる。

案内ボードやキャプション(展示品の説明)も丁寧に書かれており、博物館ではめったに実現できない、情報提供とエンターテイメント性の絶妙なバランスが保たれている。

筆者はフロアを順に見て回り、タイヤの歴史から始めた。タイヤの歴史は、思ったほど退屈ではない。それから、象徴的な映画に登場したクルマを見たり、恐ろしく高価なクラシックカーが展示されている『Splendor and Speed』展で目を丸くしたり、街中で見かけたウェイモの自動運転タクシーの仕組みを学んだり、21世紀初頭の特別なV12エンジン搭載のスーパーカーのコンセプト3台に心を奪われたりした。

ローライダーとその文化に関する魅力的なギャラリーもある。

最下階は『The Vault(ザ・ヴォールト)』と呼ばれている。上の階で展示されていない世界でも最も特別なクルマが収められている巨大な地下駐車場だ。入場料は少し高めだが、見逃したら後悔することになるだろう。

メインの展示も美しくレイアウトされているが、The Vaultはさらに特別感がある。まるで聖域を覗き見しているような気分だ。コンクリートの天井が低いせいか、すべてが実際よりもさらに近くに感じられる。

IMSA GTPスポーツレーサーのイーグル2台が、F1マシンに囲まれながら、翼と翼を並べて置かれている。その反対側には、かのサダム・フセインが乗っていたメルセデス・ベンツ600「グロッサー」が、エルヴィス・プレスリーがその信頼性の低さに怒りをあらわにしたデ・トマソ・パンテーラにぴったりと寄り添っている。

まだ5分しか歩いていないように感じたが、実際には1時間半近く経っていた。展示されているクルマに驚嘆しながら、口をあんぐり開けて立ち尽くしていた。

展示内容は頻繁に変更され、地下にあったクルマが2階に展示されたり、その逆も行われる。

もし訪れる機会があれば、ぜひ足を運んでいただきたい。これほど素晴らしいコレクションを誇る自動車博物館は世界でも数少なく、またそのコレクションをこれほど見事に展示しているところはさらに少ない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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