ブランド最高傑作の1台 アストン マーティンDB9(2) 雄叫びへ転調するV12 現代でも薄れない運転体験の充足度

公開 : 2026.05.23 17:50

VHプラットフォームを真っ先に採用し、新時代を告げたアストン マーティンDB9。抑揚豊かなスタリングに包まれるのは、456psの5.9L V12エンジンです。ブランド最高傑作の1台を、UK編集部が振り返ります。

製造品質は現代のアストンに劣らない

アストン マーティンDB9の、流麗なボディへ埋め込まれたドアハンドルを引くと、斜め上方12度へ巨大なスワンウィング・ドアが開く。ドア底辺を縁石へ当てないための配慮だが、優雅な印象を一層強く与えもする。

インテリアは、落ち着いたブラック・レザー。ガラスエリアより上はグレーで、ステアリングホイールにはレッドがあしらわれ、単調さを打ち消している。

アストン マーティンDB9(2004~2012年/英国仕様)
アストン マーティンDB9(2004~2012年/英国仕様)    ジェイソン・フォン(Jayson Fong)

造形や装備は時間の経過を感じさせるものの、製造品質は現代のアストン マーティンに劣らない。アルミ削り出しのメーターパネルなど、素材は概ね上質。スピードメーターは、タコメーターと逆回転で針が回る。

スタートボタンはガラス製。この粋な処理は、インテリアデザイナーのサラ・メイナード氏によるものだ。長押しするとスターターモーターが唸り、5935ccのV12エンジンが始動。直後のひと吠えは穏やかだが、重低音で存在感は半端ない。

実際の寸法より小さく感じられるボディ

プラスチック製なのが惜しいが、センターコンソールのDボタンを押すと、滑らかに進み出す。低く構えた運転姿勢は理想的で、視界は良好。最新のDB12はガラス面積が狭く、ボディの大きさを実感してしまうが、DB9では実際の寸法より小さく感じられる。

乗り心地は、アスファルトの剥がれた穴を避けても、正直硬め。補修跡を通過する度にトントンと揺れ、ノイズも届く。それでも、高いシャシー剛性がサスペンションの能力を引き出し、不快なほどではない。

アストン マーティンDB9(2004~2012年/英国仕様)
アストン マーティンDB9(2004~2012年/英国仕様)    ジェイソン・フォン(Jayson Fong)

20年以上前に組まれた内装も、時折カタカタと鳴く。上質な印象を乱すように。国立公園を巡る道幅は広くなく、路肩にはゴツゴツした岩が露出する。

勇ましい雄叫びへ転調していくV12

V12エンジンは、極めて活発。右足の角度を深めるほど、前方で放たれる燃焼音が増大し、多気筒ユニットらしい巨大なトルクの波に乗れる。ZF社製の6速ATは、洗練された印象を保つべく、早めにシフトアップしたがるが。

ステアリングホイール裏のパドルを弾き、シフトダウンすれば、回転上昇が生む音響へ浸れる。3速と4速を活用し、大地の起伏へ沿うように伸びる道を疾走すれば、まさに悦楽。豊満な運転体験へ満たされる。

アストン マーティンDB9(2004~2012年/英国仕様)
アストン マーティンDB9(2004~2012年/英国仕様)    ジェイソン・フォン(Jayson Fong)

速度域が高まれば、硬めの乗り心地は解消。路面のツギハギは均され、スポーツカーらしい姿勢制御が顕になる。90度曲がるようなきついカーブでも、バランスは白眉。ステアリングはやや重すぎるかもしれないが、正確で、グリップ力が高く扱いやすい。

開けた直線区間でシフトダウンし、アクセルペダルを踏み込む。2速の2000rpmから引っ張ると、100rpm増す毎に速度上昇は鋭くなる。4000rpmを過ぎた辺りで排気音がキャビンを満たし、図太い唸りから勇ましい雄叫びへ転調していく。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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