【受注一時中止はなぜ起こったか】ジムニー・ノマドに見る、自動車産業界基本構造と商流の問題点

公開 : 2025.02.06 11:15

望まれるユーザーが十分に理解しうる納期

対応策としてスズキは、国内工場での生産能力の拡張などを進めながら、その後は日本市場以外の対応をインド工場に委ねることになった。それでも、現時点で国内向けバックオーダーが残っている状況であるため、このタイミングで日本に登録車5ドアを導入することに対して、スズキ社内で賛否が分かれた。

当初は反対の姿勢を示していた鈴木俊宏社長は、国内営業からユーザーひとりひとりに丁寧に説明するよう説得されて、最終的にGOサインを出したことを会見で明らかにした。ところが、発表4日後に受注一時中止という事態に及んでしまったのだ。

スズキ・ジムニー・ノマド
スズキ・ジムニー・ノマド    田中秀宣

4代目の導入初期で苦労した生産、販売戦略での学びが今回、上手く機能しなかったと言わざるを得ない。今回の対応策として、一般論として考えられるのは、インド工場での生産能力拡大に加えて、日本国内工場でのジムニー・ノマド生産開始だろう。

そして3つ目の要因は、自動車産業界の基本構造によるものだ。自動車メーカーは生産と卸売を主業として、販売については販売会社に委ねている。自動車メーカーは記者発表で大々的にお披露目し、販売会社が注文を受付けてその数をメーカーに発注する、という旧態依然とした商流だ。

他の産業界でも同じような商流だが、自動車の場合、自動車メーカーの先行投資額が巨額であり、その回収までの期間も長いことが特徴となる。そのため、今回のように需要と供給のバランスが崩れると、一気にメーカーは機能停止に陥ってしまう。

将来的に自動車産業界は、EVシフトによるエネルギーマネージメントビジネスに転じることが予想されるが、そうなると需要からバックキャストした生産予測を詳細に行うことが必然となるだろう。いずれにしても、ユーザーとしては一刻も早く、ジムニー・ノマドを含めたジムニー・シリーズの納期が、ユーザーが十分に理解しうるレベルを維持することが望まれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 撮影

    田中秀宣

    Hidenobu Tanaka

    写真が好きで、車が好きで、こんな仕事をやっています。
    趣味車は89年式デルタ・インテグラーレ。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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