【破談後どうなる】日産、ホンダとの経営統合協議打ち切りか?気になる三菱を含めた3社の立ち振舞い
公開 : 2025.02.06 10:45 更新 : 2025.02.06 15:07
2月4日から5日にかけて、『ホンダと日産の経営統合が白紙に戻りそうだ』というニュースが飛び交いました。本記事作成時点で正式コメントは出ていませんが、自動車産業界、経済界がザワついたこの話題を、桃田健史が分析します。
ホンダが張った予防線
やはり無理だったのか。各種報道を見て、そう感じた。
2月4日から5日にかけて、『ホンダと日産の経営統合が白紙に戻りそうだ』というニュースが飛び交い、自動車産業界のみならず、グローバルの経済界がザワついた。ホンダが日産を子会社化する提案を出し、それを日産側が拒否しているという。5日に日産が取締役会を開き、ホンダからの提案については概ねNO回答だったという。

ただし、これらはあくまでも報道ベースであって、本稿執筆時点(2月5日夜)ではホンダと日産それぞれから正式コメントは出ていない。それでも、こうした事態に陥ることは十分に予想できた。
まず、ホンダは日産との経営統合について予防線を張っていた。
例えば、昨年12月23日にホンダ、日産、さらに三菱自のトップ3人が登壇した共同記者会見で、ホンダの三部敏宏社長は「経営統合しない可能性はゼロではない」と、記者の質問に対して答えている。
経営統合するためには、株主、社員(労働組合を含む)、サプライヤーなど関連企業の関係者、そして販売店の関係者など、いわゆるステークホルダーの意思を取りまとめなければならない。かなり高いハードルではあるが、『100年に一度の自動車産業大変革期』を生き抜くためには、乗り越えなければならないチャレンジだ。
見方を変えると、仮に経営統合しなくても、ホンダ、日産、そして三菱自が『自らの意思で真剣に変わろうとする姿』を社内外に示す絶好の機会となる。つまり、経営統合しないことは、各社にとって『ワーストシナリオ』ではない。
『企業風土の違い』は特にない?
今回の経営統合に向けた動きが表沙汰になってから、テレビ、ネット、ラジオ、新聞、雑誌などでこの話題が取り上げられると、『企業風土の違いが大きなハードル』という解説がつくことがよくある。
例えば、日産は日系メーカーの名門でありエリート意識が高く、一方でホンダは二輪車から這い上がってきた現場主義であり、2社は『水と油』だと表現する。確かに、1980年代から1990年代頃までは、筆者の実体験として、そうした企業風土が日産とホンダにあったと記憶している。

しかし、日産は良くも悪くも、ゴーン体制によって企業風土は大きく変わった。銀座事業所のホワイトカラーと、生産現場のブルーカラーとの『会話』が増え、横浜新本社屋が完成した頃には銀座気質はかなり減った印象だった。
一方ホンダも、変わった。ホンダ独自の『研究所』のポジショニングが変わったことが、ホンダとしての変化の大きな要因だ。
『本社(本田技研工場)』と『研究所(本田技術研究所)』という、営業やマーケティングと技術開発が完全分離した旧来の仕組みを刷新し、二輪、四輪、パワープロダクツのそれぞれで量産開発をホンダ全体で行うようになった。一時期、グローバル600万台を目指し、結局は方針転換を余儀なくされた際の『学び』も、ホンダの変化を後押しした。
そんな現時点でのホンダと日産、それぞれの各種部門関係者と意見交換していても、2社それぞれの企業として個性がとても強いとは感じない。言うなれば、ホンダも日産も企業として『成熟期』にある。
よって、今回の経営統合の協議は、成熟した企業が次世代事業を見据えて財務・法務の面での経営的な『駆け引き』を行っているに過ぎない。企業風土の違いが、経営統合に向けた大きなハードルには思えない。