ミニ・クーパー SE:公園で駆け回る子犬 完成度は最高水準:クプラ・ボーン VZ ベスト・ファンEV(2)

公開 : 2025.03.13 19:05

2位:クプラボーン VZ ゴルフのGTIと同じ位置付け

クプラ・ボーン VZは、それ以外のボーンと殆ど差別化されていない。特別設定のボディカラーを選べるし、スペイン語で高速を意味する「ヴェッロ」の略、VZのロゴも付いている。だが、アップグレードされたクプラだという主張が、控えめなのが好ましい。

駆動用バッテリーは、フォルクスワーゲンID.7譲りの326ps。サスペンションは専用チューニングで、アダプティブダンパーも組まれている。フォルクスワーゲン・ゴルフのGTIと、同じ位置付けといえる。実際に走らせれば、忘れられない体験を享受できる。

クプラ・ボーン VZ(英国仕様)
クプラ・ボーン VZ(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

それを想起させるアピールは少ないものの、羊の皮を被った狼的な仕立ては、古くから高性能モデルの特長の1つとしてみなされてきた。E28型のBMW M5などは、その好例だろう。視覚的な平凡さこそ魅力の核心だと、AUTOCARは以前に評している。

このボーン VZも、その点では共通している。むしろ、スポーティに着飾りすぎた平凡な性能を持つモデルが、近年は多すぎるように思う。筆者としては、適度に好戦的でやる気を感じさせる、控えめなボディが気に入っている。派手さはなくても、魅力的だ。

総合的な完成度は最高水準 お高めの価格

ステアリングホイールを握れば、そうコレコレ、と思わせる。サベルト社製のシートが身体を受け止め、ステアリングホイールのリムを通じて、指先へフィードバックが届けられる。後輪駆動らしく、コーナリングラインの調整はアクセルの加減で可能だ。

ピーク・ディストリクト国立公園のワインディングでも、思い切り楽しめる。それでいて見た目の威圧感は小さく、市街地や住宅地でも浮かない。実用性も高い。

クプラ・ボーン VZ(英国仕様)
クプラ・ボーン VZ(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

アダプティブダンパーが組まれ、サスペンションの硬さは状況で選べる。普段はノーマル・モード、気張りたい時はクプラ・モードが、筆者のオススメだ。

タッチモニターの表示は、もう少しシンプルでも良かった。今回の5台の中で、英国価格は1番高い。この辺りが、1位になれなかった主な理由といえる。

加えて、モダンで人目を引くスタイリングを筆者は評価するものの、従来的な美しさまでは備わらないかもしれない。高速なバッテリーEVだという主張は感じられても、エモーショナルな造形ではないだろう。

ミニ・クーパー SとアルピーヌA290は、視覚的な誘引力で優れる。好みの問題もあるが、多くの人が共感できると思う。クルマを好きになる、大きな要素だ。

総合的な完成度で、ボーン VZが最高水準にあることは事実。家族での長距離旅行に使える、広い荷室と航続距離は明らかな強みだ。乗り心地も良い。一緒に生活するうえでは、今回の中で1番のバッテリーEVだといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    役職:ソーシャルメディア・エグゼクティブ
    AUTOCARのSNS担当として、X、YouTubeショート、インスタグラムなどの運営を任されている。以前は新聞紙や雑誌に寄稿し、クルマへの熱い思いを書き綴っていた。現在も新車レビューの執筆を行っている。得意分野はEVや中古車のほか、『E』で始まるBMWなど。これまで運転した中で最高のクルマは、フォルクスワーゲンUp! GTI。 『鼻ぺちゃ』で間抜けなクルマだったが、家族の愛犬もそうだった。愛さずにはいられないだろう。
  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    2006年より自動車ジャーナリストとして活躍している。AUTOCARを含む複数の自動車専門誌で編集者を歴任した後、フリーランスとして活動を開始し、多くの媒体で執筆を続けている。得意分野はEV、ハイブリッド、お菓子。2020年からは欧州カー・オブ・ザ・イヤーの審査員も務める。1992年式のメルセデス・ベンツ300SL 24Vの誇り高きオーナーでもある。これまで運転した中で最高のクルマは、2008年のフォード・フィエスタSTとアルピーヌA110。どちらも別格だ。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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