タイヤを安全に「パンクさせる」画期的な試験装置 自動運転開発にも重宝
公開 : 2025.05.12 06:45
米国企業コアラ・テクノロジーズは、タイヤのパンクを再現できる試験装置を発表しました。車両の走行安定性試験などに使用され、従来よりも再現性のある正確なデータを取得できるとのこと。持続可能性も配慮されています。
140km/hでパンクを再現 繰り返し使えるキット
自動運転車や半自動運転車には、新しい安全性試験方法が必要とされている。例えば、人が運転していないときにタイヤが突然パンクした場合、どのような事態が発生し、またどのように対応するべきなのか?
米国のコアラ・テクノロジーズ(Koala Technologies)社は、車内からリモート操作でタイヤの空気を抜くことができる新しい試験装置を開発した。このキットは、米連邦規格FMVSS 110など既存の規制要件を満たしている。

FMVSS 110規格は、タイヤが十分な荷重容量を有し、車両の使用目的に適しているかどうか確認することを目的としたものだ。また、高速走行中にタイヤの空気が抜けてもリムから外れないかどうかもチェックされる。
コアラ・テクノロジーズの試験キット『Te.Sense Bloom』は、電気モーターの作動時および非作動時におけるEVの横方向安定性試験の新基準にも準拠している。この基準は、中国など一部の地域では既に義務化されている。
Te.Sense Bloomは、パンクによる急激な空気圧低下を再現するように設計されたエアエジェクターバルブを備えており、乗用車または大型車両の車輪に取り付けられる。
装置はチューブとコネクタを介してタイヤ内部に接続される。試験担当者がボタンを押すと、バルブが開き、実際のパンク時と同様に瞬時に空気が抜ける。
再利用可能なターンキー方式(すぐに使用できる状態)で、再現性のある結果を提供するように設計されている。
コアラ・テクノロジーズは、複数のタイヤを破壊する必要がない点で従来品よりも優れていると説明している。従来の試験方法は、テストコースで車両を走らせ、スパイクによって片側2輪のタイヤを急速に減圧して破壊するというものであった。
この方法には2つの問題がある。1つ目は、安定性試験でタイヤ1本だけ空気を抜き、残りの3本は正常な状態のままにしておくことが難しいという点。2つ目は、2本のタイヤを廃棄するコストと持続可能性の問題だ。
Te.Sense Bloomはこれらの問題を回避し、どの車輪にも設置することができる。中央のバルブからコネクターとチューブを取り付けるために、車輪を1本改造する必要があるが、コアラ・テクノロジーズは試験者の要望に応じて車輪のセットアップサービスも提供している。
装置は車内または遠隔で操作でき、最大100psiのタイヤ空気圧、最高速度140km/hまで対応している。
また、タイヤの空気圧データも取得するため、空気圧低下時の車両やタイヤの挙動を詳細に分析することができる。
余談だが、Te.Sense Bloomという製品名は、クルマやタイヤとはまったく関係がない。コアラ・テクノロジーズは自社製品に水生生物の名前を採用しており、「Bloom」は海や水路に生息する藻類にちなんでいる。