現代のクルーズコントロールは賢くない もどかしいADAS 英国記者の視点

公開 : 2025.08.14 18:45

アダプティブ・クルーズコントロールは特定の状況下では非常に便利なものですが、かえって煩わしく感じる場面もあります。現代の運転支援システムはまだまだ発展途上……。AUTOCAR英国記者コラムです。

思い通りに動かないもどかしさ

時折、散歩中の飼い犬がリードを無理に引っ張ったり、鳥に向かって吠えたりすると、その犬を厳しく叱る人がいる。

動物は本能に従って行動しているだけなのだが、それを叱りたくなる飼い主の気持ちも理解できる。これにちょっと似ていると思うのが、最近多くのクルマに搭載されているアダプティブ・クルーズコントロール(ACC)だ。

現代の運転支援システムは未熟で融通がきかない……とAUTOCAR英国記者は言う。
現代の運転支援システムは未熟で融通がきかない……とAUTOCAR英国記者は言う。

筆者(英国人)はよく、試乗車の車内で「ちゃんと設定速度で走ってくれよ!」ともがいている。アダプティブ・クルーズコントロールが通常のクルーズコントロールの上位互換だと決めつけたのは、一体誰なのだろうか? 一部のモデルでは両者の切り替えが可能だが、最近はアダプティブのみが搭載されているモデルも多い。

アダプティブ・クルーズコントロールは、渋滞で車線を変えることができず、流れに身を任せるしかないような状況では非常に便利だ。しかし、それ以外の状況では、筆者は「下位」のクルーズコントロールの方がはるかにリラックスできると感じている。走りたい速度を設定しておき、前方車両との距離が縮まってきたところで右ウィンカーを出して追い越すだけだ。

アダプティブ・クルーズコントロールを使いながらスムーズに走りたい場合、それなりの労力を要する。前方車両が減速したらこちらも自動的に減速するので、アクセルを踏んでオーバーライドしながら、理想よりも早く右車線に移動する必要がある。

センサーが「ゴースト」に反応して意味もなくブレーキをかけたり、わずかなカーブがあるだけで減速したりすることで生じるストレスは言うまでもない。

後続車にぴったりと付かれたまま、考えなしに100km/hで追い越し車線を走り続けるクルーズコントロールのゾンビと化した人もいるが、アダプティブ・クルーズコントロールは実際のところ、ドライバーに多くの配慮と労力、そしてベビーシッターのような作業を求める。筆者の周りには同じ意見の同僚が何人もいるが、もしかするとわたし達(編集部員)は、何でもかんでも自分で操作したいと考える変わり者集団なのかもしれない。

確かに、わざわざアクセルペダルで速度調整する手間は省けるのかもしれない。多くのクルマではターボラグ、ハイブリッドシステム、そして「スポーティ」なスロットルマップが相まって、一定速度を維持するのが意外と難しい。それでも、便利機能を本当に便利に使いたいと思うのは、あまりにも欲張りなのだろうか?

ここで問題となるのは、物事を自動化する「スマート」なテクノロジーが、実際にはそれほどスマートではないということだ。クルーズコントロールだけではない。一部のBMWトヨタのクルマには、自動的に作動するシートヒーターが搭載されている。

これは、もうボタンを押す必要がありませんよ、というアイデアだ(なんという贅沢! それに、ボタンを作る必要もなくなるので利益も増える!)。仕組みとしては、寒さを感じ始めた瞬間にシートが暖まり始めるというもの。しかし、筆者がこの機能を実際に使ってみたところ、シートヒーターが突然作動しなくなることに困惑した。

また、一部のボルボ車には「臨機応変」ショートカットバーという、ドライバーを惑わせる機能がある。その瞬間に役立つと思われるボタンを自動で表示する機能だが、「自分の目がおかしくなったんだろうか。前回見たときは、グローブボックスを開けるショートカットがあったはずなのに」……となることも。

飼い主が投げた木の枝を識別して拾ってくる犬のように、これらの機能は非常に印象的なものに見えるかもしれない。しかし、クルマの運転を安心して任せることは無理だろう。

犬とは異なり、クルマには設定メニューがあるため、必要に応じてオンとオフを切り替えられてもいいはずだ。しかし、不可解なことに、多くの場合そうはいかない。今のところは、ブツブツと文句を言うしか方法はないのだ。いつか、音声コントロールがそれを拾ってくれる日が来るかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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