これなら日本でも売れる? フォード・プーマ・ジェン-E 有利に立ち回れる完成度

公開 : 2025.05.05 19:05  更新 : 2025.05.06 13:07

航続距離363kmの小さなクロスオーバー、プーマ・ジェン-E登場 車内は広々 荷室は523L 普段使いで運転が楽しい 乗り心地も良好 英国なら家庭用充電器が無償 UK編集部が試乗

航続距離363kmの小さなクロスオーバー

庶民的なブランドとして、フォードは小さくお手頃なバッテリーEVを必要としてきた。ルノーは新しい5を、ジープアベンジャーを、ボルボEX30を擁している。ステランティス・グループの小さな電気自動車は、いずれも英国では好調に売れている。

というわけで、満を持して欧州市場へ投入されたのが、プーマ・ジェン-E。英国でのスターティングプライスは3万ポンド(約585万円)を切り、駆動用バッテリーの容量は53kWhで、航続距離は363kmが主張される。

フォード・プーマ・ジェン-E(欧州仕様)
フォード・プーマ・ジェン-E(欧州仕様)

見た目は、エンジン版のプーマとほぼ同じで、フロントグリルが塞がれている程度。全長4214mm、全幅1805mm、全高1555mmというサイズを持ち、車重は1563kgと比較的軽く収まっている。

車内は広々 荷室は523L スマホと無線で連携

強みの1つといえるのが、523Lという大きな荷室。床下部分のマルチ収納、ギガボックスの145Lも含まれているが。これは防水仕様で、電源を取れるようにソケットも備わる。もちろん、その上にはベビーカーを問題なく積める。

60:40の分割で倒せる、リアシート側の空間も広々。平均的な身長の大人なら、ゆったりくつろげるはず。

フォード・プーマ・ジェン-E(欧州仕様)
フォード・プーマ・ジェン-E(欧州仕様)

フロントシート側の内装には上質な素材が用いられ、大きな小物入れ付きのセンターコンソールも備わる。タッチモニターは、アップル・カープレイとアンドロイド・オートへ無線で対応。インフォテインメントは、扱いやすいシンク4システムが稼働する。

制限速度警告や車線維持支援など、運転支援システムの動作は自然。ステアリングホイール上のボタンで、不要な機能は簡単にオフにできる。

普段使いで運転が楽しい 乗り心地も良好

駆動用モーターはフロントに載り、167psと29.5kg-mを発揮。レスポンスに優れ、キビキビ市街地を走り回れる。一気にアクセルペダルを踏み込むと、ラインへ影響が出るトルクステアが僅かに生じるが、エネルギッシュな個性が伝わり逆に好ましい。

加速が鋭すぎることはなく、運転免許の点数を心配する必要性は低い。しっかり、本来の動力性能を引き出す面白さがある。回生ブレーキには、ワンペダルモードが備わる。

フォード・プーマ・ジェン-E(欧州仕様)
フォード・プーマ・ジェン-E(欧州仕様)

欧州フォードのモデルらしく、普段使いでの運転の楽しさも忘れていない。ボディ四隅に位置したタイヤが、カーブでの安定性を担保し、ステアリングの反応は小気味いい。姿勢制御は、落ち着いていて滑らかだ。

適度に締まりのある印象は、同クラスの電動クロスオーバーと一線を画す。それでいて、英国の傷んだ路面でも乗り心地は悪くない。硬めではあるものの、揺れはしっかり抑えられている。スプリングとダンパーの、絶妙な味付けといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    2006年より自動車ジャーナリストとして活躍している。AUTOCARを含む複数の自動車専門誌で編集者を歴任した後、フリーランスとして活動を開始し、多くの媒体で執筆を続けている。得意分野はEV、ハイブリッド、お菓子。2020年からは欧州カー・オブ・ザ・イヤーの審査員も務める。1992年式のメルセデス・ベンツ300SL 24Vの誇り高きオーナーでもある。これまで運転した中で最高のクルマは、2008年のフォード・フィエスタSTとアルピーヌA110。どちらも別格だ。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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