【アルピナ・マジックの正体見たり】核心は乗り心地にあらず! BMWへの商標移行前に知っておきたいこと

公開 : 2025.08.14 11:45

ただ一点のブレないスタンス

ザクセンリンクでの試乗のあと、スタッフがホテルまでD5ツーリングで送ってくれた。アウトバーンに合流して追い越し車線で普通に加速。200km/hくらいと予測しつつメーターを覗き込むと、なんと270km/hを越えていた!

スピード感のなさは、D5のスタビリティだけでなく、180km/hほどで走っている周囲のクルマの視覚的な影響もある。日本の高速道路とはまるで異なる環境(=アウトバーン)で開発され、日常的に使われていることを考えれば、アルピナ何たるか、そして低速走行の乗り心地を重視しているわけではないという彼らの言い分が、よりリアルに伝わってきた。

今年いっぱいでアルピナの商標はブッフローエからBMWへと移る。
今年いっぱいでアルピナの商標はブッフローエからBMWへと移る。    佐藤亮太

そんな経験を経た筆者の現在のアルピナ観は、より短く『超高速走行時のスタビリティと快適性を狙ったもの』となっている。

ただ一点を正確に狙うためだけに、低回転からトルクフルなエンジンやBMWがラインナップしている中で最大容量のギアボックスやデフ、そしてブレーキシステムを用い、専用開発されたタイヤ、そしてエアロのパッケージを備えている。

それがブッフローエの地でボーフェンジーペン家が一貫して追求してきた、アルピナの姿なのである。

時代とともに柔軟にスタンスを変えるBMW Mに対し、断固たる意志を持って譲らないブッフローエ・アルピナ。後者の命脈が尽きてしまうという感傷的な出来事はしかし、理論的に考えれば当然なのかもしれない。

今年いっぱいでアルピナの商標はブッフローエからBMWへと移る。我々は時代が動く瞬間を目の当たりにしているのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    佐藤亮太

    Ryota Sato

    1980年生まれ。出版社・制作会社で編集経験を積んだのち、クルマ撮影の楽しさに魅了され独学で撮影技術を習得。2015年に独立し、ロケやスタジオ、レース等ジャンルを問わない撮影を信条とする。現在はスーパーカーブランドをはじめとする自動車メーカーのオフィシャル撮影や、広告・web・雑誌の表紙を飾る写真など、様々な媒体向けに撮影。ライフワークとしてハッセルブラッドを使い、生涯のテーマとしてクラシックカーを撮影し続けている。佐藤亮太公式HPhttps://photoroom-sakkas.jp/ 日本写真家協会(JPS)会員
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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