【第15回】森口将之の『もびり亭』にようこそ:老舗イベントで体感したEVオーナーのリアル

公開 : 2025.12.10 12:05

驚いたのはクルマの知識レベルの高さ

知識も豊富で、あるテスラのオーナーは、日本でもテストが始まったFSD(フル・セルフ・ドライビング)のことを熱心に話していました。別のテスラオーナーは、BYDで走り出してすぐに、両車のキャラクターの違いを見抜きました。

分野限定ではありますが、クルマについての知識レベルはかなり高く、僕たち自動車メディアの人間に匹敵するレベルであるという印象を抱きました。

神奈川県庁駐車場を出発する試乗車。
神奈川県庁駐車場を出発する試乗車。    樋口涼

たしかに日本のEV比率は欧米や中国に比べるとかなり低いですが、それでも自分で選んで乗っている人は確実にいることがわかりました。マルチパスウェイとは多様性の意味であり、こうした人たちの声は大切にしたいと思いました。

それと今回は、観光地での開催ということもあって、クルマにそれほどくわしくない来場者も多かったので、そういう人にEVの魅力を伝えるために、もっと多角的な展示があっても良いと感じました。

たとえば、日本の近くで突然台風が発生したりするのは、海水温度の上昇、つまり地球温暖化が原因という見方が、専門家の間では一般的です。

さらにガソリンはすべて石油から作られ、その石油はほぼ輸入に頼っていますが、電気はそうではありません。僕が契約している北陸電力の電源構成は、火力は半分以下で、北アルプスなどの地勢を活用した水力が25%を占めています。

なので、これらの分野のブースも用意して、地球環境やエネルギーの問題がある中でクルマはどうすべきか、EVはどんな役割を果たすべきかを考えてもらう場があってもいいと感じました。

僕もEVは試乗会などで触れており、メーカーからの情報は入手してきましたが、ユーザーの声もまた大事だと思いましたし、こういう声をメディアに生かしていかなければいけないと感じたのでした。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

森口将之の『もびり亭』にようこその前後関係

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