【第14回】森口将之の『もびり亭』にようこそ:モーターショーがモビリティショーになった背景 #JMS2025

公開 : 2025.11.12 12:05

モビリティジャーナリストの森口将之が、モビリティの今と未来を語るこのブログ。第14回は、先日閉幕したジャパンモビリティショー2025から、過去のモーターショーを振り返ります。

『モーターショー』から『モビリティショー』へ

ジャパンモビリティショー2025が閉幕しました。読者の中にも見に行ったという人は多いのではないでしょうか。なにしろ少し前までは東京モーターショーという名前で、日本を代表する自動車の祭典だったわけですから。

ではなぜ、モーターショーからモビリティショーに看板を掛け替えたのでしょうか。理由のひとつは、いわゆる自動車先進国で行われるモーターショーの来場者数が減り、外国車の出展が少なくなっていたからです。

スマートモビリティシティ2015の試乗コース。
スマートモビリティシティ2015の試乗コース。    森口将之

同じモーターショーでも中国や東南アジアなどは、今でも多くの来場者を集めているようですが、先進国については衰退傾向だったことは否めません。

一方で注目を集めているのがアメリカの2つのイベント、1月にネバダ州ラスベガスで開催されるCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)と、3月にテキサス州オースティンで行われるSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)です。

CESは業界関係者向けの見本市で、エレクトロニクスがメインであり、アメリカが主導権を握っているハイテク系企業が数多く出展しています。SXSWはエンターテインメントとマルチメディアの融合というコンセプト、カフェやライブハウスまで会場にするまちぐるみイベントというところが斬新です。

いずれも最新のテクノロジーやムーブメントが集結する場になっており、モビリティについてもドローンやロボットなどの新種が早くから姿を見せていて、未来の移動のトレンドを探る最適の場のひとつになっていました。

来場者数そのものは今年のCESで約14万人と、そんなに多くないのですが、影響力の大きさはモーターショーを上回るほどになっていると実感しています。

会場の配置を活かしたメニューも

おそらく東京モーターショーを主催してきた日本自動車工業会は、CESやSXSWの要素も取り込みたいと思い、モビリティという言葉を起用したのだと思っています。

といっても、最近になってこうした動きを始めたわけではありません。2011年から3回にわたり、スマートモビリティシティという場が用意されていたからです。

2017年CESで発表されたファラデー・フューチャーFF91。
2017年CESで発表されたファラデー・フューチャーFF91。    森口将之

2015年の回では僕も、当時所属していた日本デザイン機構のイベント『ヒューマンモードを考える』でワークショップを行った経験があります。

さらに2019年は、会場が2ヵ所に分かれたことを逆に生かし、1kmほど離れた両会場の間をパーソナルモビリティで移動できるというメニューが用意されていました。

続く2021年の東京モーターショーはコロナ禍で中止となりましたが、同じ年、ドイツでは開催場所をフランクフルトからミュンヘンに移し、IAAモビリティと名前も変えての開催になりました。ドイツも同じようなことを考えていたというわけです。

では、モビリティジャーナリスト歴15年の僕から見たジャパンモビリティショーは、モビリティのショーなのか。少なくとも2年前よりは、それっぽくなっているという印象です。

会場の半分ぐらいが既存メーカーで占められているのは、日本自動車工業会が主催しているので当然でしょう。ただCESやSXSWは、老舗企業の隣にスタートアップが並ぶような配置で、そのほうが見ていて楽しいと感じました。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

森口将之の『もびり亭』にようこその前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事