ポルシェ911カレラS (助手席インプレッション)

公開 : 2015.09.14 23:40  更新 : 2017.05.29 19:04

「スポーツ・モードでは、スロットルをリフト・オフした際にターボチャージャーのウェイストゲートが開く仕組みになっていますが、スポーツ・プラスでは開きません。おかげで再びアクセルを踏みこむと瞬時にトルクを積みあげることができるのです。この時はターボならではの瞬発力を表にだすのです」とシェルホーン。

加えてポルシェはエンジン・サウンドの味付けのために、デジタル音源を用いることはしなかった。エンジン音をキャビンに伝えるために、アナログ式のダクトを使用している。それぞれのグレードに合わせたセッティングを施しているとのことだ。

オプションのスポーツ・エグゾーストと、アグレッシブなセッティングの組み合わせのおかげで、後方から聞こえるエグゾースト・ノートは力づよいうえに高密度だ。

PASM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメント)の見直しもおこなわれ、あらたにPSMスポーツ・モードも加わった。スポーツ・クロノ・パッケージと共同作業するものであり、センター・コンソール上のPSMボタンを押すとアクティベートできる。

PSMスポーツはスタビリティ・コントロールの介入を完全にオフにすることなく、穏やかなものにできる。ヨー・ムーブメントを許し、後輪をスライドしやすくするのだ。サーキット走行でも、愛好家を満足させられるレベルにあるとポルシェは予測する。

「PSMスポーツは、大げさではないにせよドリフト・アングルを大きくすることを目的としています。そのうえ、スピンする確率はほぼ皆無です」とシェルホーン。常識的に考えてスピンするのでは? というスピードとアクセル操作でコーナーに飛び込んでいたが、たしかに車体は豪快にパワー・スライドするのみであった。

もし仮にあなたが望めば、ボタンの長押しでアシストの介入を解除することもできるが、ハードなブレーキング時に立ちあがるセーフティ・ネットは保証されるという。

「そろそろ飛ばしましょうか」とシェルホーン。ここから先は、ターボ・エンジンが実に精巧で分別あるものかが明らかになる。

「完璧にバランスがとれているんです」とニコリと笑う彼の前方のスピード・メーターを見ると、すでに200km/hをさしていた。「子どもに戻ったような気持ちになりますよ、本当に」と彼のテンションも高ぶっている。

メイン・ストレートでは7500rpmのレブ・リミットまで回してくれ、スペック・シートに偽りがないという証明にもなった。加給圧と排気系の違い、さらにはエンジン制御によってカレラとカレラSでは51psの差があるが、許容回転域は同じである。

「1日中乗ったって疲れ知らずですし、サーキットに持ち込んでも楽しいです。これぞ911ですね」と語ってくれた。

「ポルシェ959を思い出してください。あのクルマとこちらは最高出力も最高速度も同じなのですよ。次世代のカレラSは996時代の911ターボと同じレベルですし……」とも。

パフォーマンスだけを重要視しなかったターボ・エンジンは、各所のコンポーネントを見なおすことにより、先代よりも12%燃費が向上しているという。911のオーナーのどれほどが燃費を重視するか定かではないが、着実な前進といってもいいだろう。

ポルシェがターボ・エンジンを搭載したデリバティブをだすことに落胆するのは早い。自然吸気よりも優れたターボ・エンジンを採用した点において、ポルシェの築く未来はテスト車同様に悪いものではなさそうだ。

(マット・バート)


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