仕組みは簡単。後輪の内側にある大型の電気モーターが470psを叩きだす傍らで、前輪の小さなモーターが221psを叩きだすだけだ。

リチウムイオン・バッテリーは床下に敷き詰められるため、キャビンやトランク・スペースまったく犠牲になっていない。

対するベントレーは、キャラクターで勝負する。キルティングのシートに身体を滑りこませると、「あ、これこそ豪華っていうんだな」と直感的に納得できる。

たっぷりと使用されるつややかなウッド・パネルと、どこか甘いレザーの香り。走りださずとも、心から満足できるはずだ。甘美である。

後席に座っても同じ。スラックスのアイロン掛けができるのではないかと思えるほど足元は広く、やはりここにもたっぷりとしたウッド・パネルが見て取れる。

やわらかなレザーの手触りや、シャンパン用のキャビネット、細やかなステッチ……。隅から隅まで特別なクルマに乗っていると感じられる。標準のエア・サスペンションやステアリング、ギアボックスのチューニングも絶妙である。

もっとも楽しめるのはスポーツ・モードだ。これはミュルザンヌ・スピード専用のセッティングとなる(他のモードは基準車から変更なし)。ちなみに最高出力は513ps→537psへ、最大トルクは104kg-m→112kg-mへと増強されている。