テスタロッサへ迫った加速力 ベントレー・ターボR(2) 今こそ誘う共感 成功のバトンはアルナージへ

公開 : 2026.03.07 17:50

高性能なミュルザンヌへ見出された可能性 コーナリングは目を見張る水準 テスタロッサへ迫った加速 1980年代の雰囲気に満ちた姿 ベントレー復調を導いたリムジンをUK編集部が紐解く

快適性が重視された15インチ・ホイール

ラグーン・ブルーが妖艶な、ベントレー・ターボRの履くアルミ・ホイールは15インチ。見た目より、快適性が重視されていた時代らしい。タイヤのサイドウォールは厚く、サスペンションのストロークは長く、優れた乗り心地を叶えている。

運転席へ座ると、ボンネットは長いが、ピラーは細く視界良好。優雅でありながら、骨太さも滲む。背もたれを倒しても、身長190cmの筆者の場合は天井が近い。

ベントレー・ターボR(1985~1999年/英国仕様)
ベントレー・ターボR(1985~1999年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

トランスミッションは、ゼネラル・モーターズ(GM)社製の3速オートマティック。ターボ・ハイドラマティック400と呼ばれたユニットは、反応が緩慢ながら、市街地を走らせるぶんには不満はない。セレクターは、ステアリングコラムから伸びる。

このATは、1990年に同じくGM由来の4L80-E型4速へ交代。シフトレバーもフロアマウントへ移動し、スポーティさが高められた。

ブランドの復調を導いたターボR

もう1台、ダーク・グリーンのターボRはモデル末期に当たる1997年式で、ロングホイールベースのRT。252台だけ作られた、貴重な生き残りといえる。アップデートを経て最高出力は405psへ上昇し、内装も豪華さが高められている。

ターボRはターボS、今回のターボRTへと進化を重ね、1998年に56台の限定仕様、426psのターボRTマリナーが登場。最大トルクは87.4kg-mへ引き上げられ、オーナーを満足させるスピードメーターが、後席側にも設定された。

ベントレー・ターボRT LWB(1997~1998年/英国仕様)
ベントレー・ターボRT LWB(1997~1998年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

1980年代が終わる頃には、ロールス・ロイスのクルー工場をラインオフするモデルの、半数以上をベントレーが占めていた。ターボRの登場が、ブランドの復調を導いた。

1990年代に入ると、世界的に景気は悪化。工場はリストラへ迫られたものの、ターボRの技術はビッグクーペのコンチネンタルRへ利用され、経営を支えることになった。

テスタロッサへ迫ったターボRTの加速力

ターボRTでは、センターコンソールがターボRと異なることへ気付く。レザーで階層状に仕切られず、全面にウォールナット・パネルが貼られている。精巧な手仕事は、時代を超越して感動を与えることを実感する。

市街地を忍ぶように走り、交通量の少ない郊外へ。6.75L V8ターボエンジンの全力を召喚する。334psを発揮する、ブルーのターボRも速いが、ターボRTはその上を行く。0-100km/h加速は5.8秒へ縮め、当時のフェラーリ・テスタロッサへ迫ったほど。

ベントレー・ターボRT LWB(1997~1998年/英国仕様)
ベントレー・ターボRT LWB(1997~1998年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ステアリングは想像以上に重いが、レシオはクイックで、狭い裏道でも巨体を導きやすい。車高は僅かに落とされ、17インチ・ホイールが見た目だけでなく、身のこなしも引き締めている。それでも、凹凸だらけのロンドンのアスファルトを、滑らかにいなす。

ターボRシリーズは、1999年に生産を終了。その頃には、新車でもクラシックカー的な雰囲気を漂わせていたが、通常のホイールベース版は計5207台、ロングホイールベース版は2083台提供されている。そしてアルナージへ、世代を交代した。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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