【世界最古のV8ユニットに幕】 ベントレー・ミュルザンヌに積まれた名エンジン 後編

公開 : 2020.10.17 16:50  更新 : 2020.12.08 08:38

Lシリーズと呼ばれるV型8気筒エンジンは、シルキーな力強さで、61年間もベントレーとロールス・ロイスのタフな心臓を担ってきました。しかし2020年に製造が終了。量産最古の設計といわれるユニットを、振り返ります。

ベントレーのイメージを一新したV8ターボ

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)
photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)/Jonathan Fleetwood(ジョナサン・フリートウッド)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

  
2ドアのロールス・ロイス・コーニッシュとカルマグが計画されると、V8エンジンのLシリーズは、ソレックス製キャブレターを装備。一方、パワーアップを目指す中で、開発予算の半分近くを環境対策へと奪われ、燃料インジェクションの重要性が高まった。

1979年の北米向ロールス・ロイス・シルバーシャドウIIには、ボッシュ製の機械式インジェクションが選ばれた。1980年に登場した、シルバースピリットにも登用されている。だが、日本と北米以外では、SUキャブレターを載せていた。

ベントレーS2(1959年)
ベントレーS2(1959年)

ターボ版Lシリーズは、当初カルマグ用に設計されたが、1982年のベントレー・ミュルザンヌ・ターボでデビュー。SZ系のフラッグシップとして、華を飾った。

ギャレット製T04ターボを組み合わせ、ベントレーのイメージを一新。経済界の成功者に選ばれる、最速のラグジュアリー・カーとして認知されるようになる。

ターボ化されたLシリーズ・ユニットは、環境負荷や整備性、信頼性などでの強みを証明。混合気の流れや点火タイミング、熱負荷などの調整を受け、よりパワフルでクリーンに改良された。滑らかで静かに回る特性は、そのままに。

生産開始から20年が経過していたユニットは1980年代にも適合し、さらなる継続採用が決定。Lシリーズは、クルーで生産される唯一のパワーユニットとして絞られた。

ターボ版に加えられた改良は、自然吸気版にも適用。2500点にも及ぶ、部品の合理化も果たしている。燃料インジェクション化で、1980年末には233psを引き出した。

世界最速のラグジュアリー・サルーン

ミュルザンヌ・ターボRの登場で、ベントレーへの注目度はさらに高まる。最高出力は324psを得ていたが、GM製のATに対応させるには、ブースト圧を下げる必要がった。最高速度は230km/hに届き、世界最速のラグジュアリー・サルーンを自負した。

ターボエンジンはオンボード診断機能を備え、シリンダーごとに点火コイルを搭載。触媒の付かないベントレーは、ボッシュ製の最新エンジン・マネージメント・システムを獲得し、365psまでパワーアップした。

ベントレー・ミュルザンヌ用Lシリーズ・ユニット
ベントレー・ミュルザンヌ用Lシリーズ・ユニット

ロールス・ロイスでも、短命となった1997年のSZ系シルバードーンで、ターボエンジンが選べるようになっている。

続く水冷ターボを獲得したベントレー・コンチネンタルTでは、413psへ上昇。1997年のベントレー・ブルックランズSやR、1997年のロールス・ロイス・シルバースパーでは、低圧仕様で304psが与えられた。

1996年、ロールス・ロイスの親会社だったヴィッカースは、エンジンの生産拠点をクルーからコスワースへ変更。Lシリーズも終わりになるかと思われた。最新の4ドアモデルには、提携していたBMW由来のV8とV12エンジンが搭載されていた。

間もなくしてヴィッカースは、ベントレーとロールス・ロイス・ブランドの売却を策略。英国で最も著名な2ブランドは、多国籍企業へと売られてしまう。

だが、ベントレーをフォルクスワーゲンが引き継ぐという結果は、英国ブランドにとって悪くないものだったといえる。

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