アウディS8プラス

公開 : 2015.10.30 23:30　　更新 : 2017.05.29 18:14

現実味を欠くほどの多大なトラクションと、アップレート済みのエア・スプリングのおかげでコーナリング・スピードをあげていっても破綻することはない。

コンフォート・モードにすれば、これまでの暴れ方が嘘だったかのようななめらかな乗り味に転じる。21インチのホイールを履いているにもかかわらず、当たりはあくまでしっとりとしている。

ここに書けないような3桁の速度域でもロード・ノイズや風切り音が聞こえないのは、複雑なノイズ・キャンセリング・ソフトウェアや古典的なデッドニングが効いているから。

たとえどんなにストレスフルな一日でも、何もかもを忘れられそうなくらい心地よいレザー・シートには赤いパイピングとステッチがあしらわれている。

メッセージの表示ファンクションやバング&オルフセンのオーディオを選ぼうがそうでなかろうが、お金で買えるもっともソリッドな室内のひとつに身を浸している快感がそこにある。

■「買い」か?

ムダでばかげたクルマとお思いの読者もいるかもしれないが、正直に言わせてもらうと、その考えは正しい。したがって「買い」か? ではなく「買いたいか?」という質問の方が、適切だと思える。筆者は買いたい。数えきれないほど笑顔にしてくれたことが理由である。

残念ながら筆者自身はS8プラスをキャッシュで買えるほどのポジションではないが、もしあなたがそうであれば買うべきだと思う。スタンダードなS8よりも300万円ちかく高価であることを躊躇うべきではなく、メルセデス-AMG S63よりも遅く高価であるが、S8プラス単体でみるとバーゲン・セールだといえる。

(ジョン・ハウエル)