いい意味でアウディらしい無機質さと、ハンドクラフトらしい風合いのミックスも見事だ。ひょっとしたら、3Dプリンターで作られたようなクルマかもと思っていたのに……。

走らせてみれば、生まれつきスポーツカーの使命を背負ったクルマであることがわかる。プロレスラーと握手したみたいに、有無をいわさぬパワー感を見せつけてきたと思えば、つぎの瞬間には忍者みたいにサッと向きを変える。

もうスピード・メーターの指している数字なんてどうでもよくなる。

ほかのアウディとは明らかに違う。R8に乗ることはすなわち、惑星上のベスト・ドライバーズカーに乗っているのだとさえ思えてくる。

とにかく速いし、びっくりするくらいに安定している。コックピットは居心地がいいし、音にも痺れる。とてつもなくダイレクトな点にも惚れぼれとしてしまう。

まるでイライラしない。つねにハッピーでいられる。

ひとつ、オプションのダイナミック・ステアリング・システムがそう感じさせてくれる。直感的ではないにせよ、路面のうえの状況を緻密に、正確に手元に伝える。