トラクション／スタビリティ・コントロールの介入マナーも細かなところまで考えられており、プログラムに反映されている。修正するのではなく、自信を促すタイプのシステムであり、おかげでリミットまで思い切ってアクセルを踏み、ハンドルを切ることができる。

独自にチューンした、電気機械式ステアリングは低速域では軽めの設定だが、かといって反応が鈍くスカスカとした印象はまるでない。速度が増すと重みが増していき、チャレンジングな道でも思いっきりプッシュできる違和感のないセッティングがなされる。

センター付近でさえ手元にはたっぷりとしたインフォメーションが伝わる。切りこむほどにシャープになり、コンパクトな車体をミリ単位で調整できる。いつものMのそれである。

舵角が小さい段階で、一瞬のロールが看取されるが、そこからさらに舵角が増す際にはスッと反対方向にボディが流れる。必要以上に左右にボディが傾いている感覚がない。自信を掻きたてるもうひとつのポイントである。

アクセル・ペダルのわずかな操作でボディの向きが変えられるのもいい。考えるよりも先に、感覚的にスライドできる。そのまま流しながら、白煙とともにコーナー出口へ。愉快な時間であった。

英国の道を走らせるまでサスペンションの最終評価は待ちたいが、アダプティブ・サスペンションは基本的にはやわらかく、しなやかな動きをしている。

スポーツ・モデルであるだけに、起伏の大きい路面だと多少の突きあげが看取されたが、全般的にはよくジャッジされている印象であった。

■「買い」か?

4シーターの小型スポーツ・モデルがほしいのであればイエス。ただし、早々と売り切れることが予想されるので、急いでディーラーに行った方がいい。

ラゲッジ・スペースこそ、ハッチバックのライバルに劣るものの、後輪駆動にこだわった点が楽しさに直結しているのは事実。依存性のあるモデルである。

BMW M2 M DCT

価格	£46,575(761万円)
最高速度	250km/h
0-100km/h加速	4.3秒
燃費	12.7km/ℓ
CO2排出量	185g/km
乾燥重量	1495kg
エンジン	直列6気筒2979ccターボ
最高出力	370ps/6500rpm
最大トルク	369kg-m/1450-4750rpm
ギアボックス	7速デュアル・クラッチ