「生ける伝説」 BMW 3.0CSL vs M3 CSL 当時の時代背景を学ぶ(前編)

公開 : 2017.08.16 18:40

いよいよエンジンを始動してみよう

2代目M3の弱点の多くに対処したE46 M3が2000年に登場した際にも、高性能ロードカーとしてイメージは揺るがず、妥協を認めないひとびとはオリジナルのM3こそがM3だと主張した。

E46 M3のモデルとしてのライフサイクルが終わる前の2003年に、当時のBMW GmbHの副社長ゲルハルト・リヒターが、サーキット走行を見据えて軽量化したM3 CSLを発表した。

CSLにはE9のようなフロントウィングベントが装備され、価格もパワーも途方もなかったが、不要な装備をすべて取り去り、もうひとつのドイツ車メーカー、ポルシェの911との対決に備え、誇らしげにM3のエンブレムを頂いていた。当時のメディアはこれには驚き、このときばかりはオリジナルのM3に触れなかった。

エンジンを始動して少しすると、おどろおどろしいアイドリングに落ち着く。

華麗なエアロパーツを装備した排気量3153ccの「バットモービル」は、レーシングバージョンのM30エンジンの排気量拡大のためにストロークを84mmに拡大したエンジンを搭載し、ホモロゲーションを受けた。

艶やかなウッドでトリムされたインテリアで普通のE9クーペと違うのは、シールの快適なローバックバケットシートを装備していることだ。後方の視界は巨大なウイングによって遮られる。またストライプはフロントウィングにも施されている。

ヨッヘン・ニーアパッシュとマルチン・ブラウンガルトが開発したドラッグ低減と安定性強化のための「バットモービル」用ボディキットは、当時ドイツでは違法であったため、ショールームではバッグに入れてトランクに収められていた。

まるで薪を割る斧のようなこのボディキットのために、評論家の意見は真っぷたつに分かれたが、CSLという魔法の3文字を目にしたときに最初に頭に浮かぶのは、この巨大な翼を付けたライトウエイトバージョンのM3だ。

ハンス・スタックがプフランツガルテンを最高速で走り抜けてGP5に輝いたのも、このM3である。

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