80年代ヒーロー対決 M3スポーツ・エボ vs シエラRSコスワースvs 190E 2.5-16(最終回)

公開 : 2017.11.05 11:40  更新 : 2021.01.30 21:04

スピード/スリル バランスの妙

M3スポエボから乗り換えると、190E 2.5-16は低回転域で明らかに力強い。最大トルク値を比べるとわずかに190E 2.5-16の方が劣っているから不思議だ。

吹け上がりとフレキシビリティの点でも2.5-16はM3スポエボに勝っているが、このエンジンも本領を発揮するのは4000rpmを超えてからである。スロットルペダルを目一杯踏み込むと、キャビンは200psの咆哮で満たされ、俄然騒々しくなる。

現在の尺度で測っても、これは本当に素晴らしくよくできたエンジンである。最後の1000rpmこそM3ユニットほど強烈ではないが、それ以下の回転であればMを凌ぐほど感動的だ。

当時のメルセデスの公式コメントによると、2.3-16ユニットは普通の190Eの2.3ユニットに比べて、組み立て工程に約10倍もの時間がかかっているという。もちろん、その労力は無駄にはなっていない。

セルフレベリング機構を備えるマルチリンク式リア・サスペンションは、ドライ路面では舐めるように路面に追従し、乗り心地も素晴らしい。

コーナリングスピードもなかなかのもの。ウェットではそれなりに腕が要求されるが、テールスライドを存分に愉しめる仕立てになっている。

とは言え、熱狂的なM3スポエボと残忍なRSコスワースに乗った後では、190E 2.5-16はいたって真当なクルマに感じる。

端正なスタイルと然るべきスピード、それにスリルとが見事にバランスしている。M3スポエボほどのスリルは味わえないが(それは190EエボリューションIIで味わえる)、癖のあるRSコスワースより有能なロードカーであることは間違いない。

190E 2.5-16は深みのあるキャラクターといつまでも乗り続けられそうな堅牢さ備えている。今の中古車相場を鑑みると、選択肢として大いにアリだろう。このクルマは、1980年当時、ひとびとがその価値を見落としていた隠れた80’sヒーローである。

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