中古アストン マーティン 3台乗り比べ 「手の届く上流階級」前編

公開 : 2018.04.28 14:15  更新 : 2018.04.28 14:35

アナタはDB9派?

DB7を横に停めると、DB9は鮮やかながら先代のアップデート版に過ぎないように見える。しかし、見た目はあてにならない。初期はイアン・カラムが手掛けたが、仕上げを担当したのはデンマーク人のヘンリク・フィスカー。彼は言う。「アストン マーティンで働き始めた頃、デザインスタジオがなかったので、モデルの仕上げはジャガーのスタジオで行いました。両社とも、フォードの傘下にありましたからね。そこでは誰が何をするかに困惑しました。とりわけ、メディア対応にね」


DB9のプロポーションやサイドビューはDB7に似たものだが、その下にはずっと先進的なエンジニアリングが隠れている。その飛躍度の大きさを強調するべく、車名の数字はひとつスキップされたのだ。それはもはや、世にあふれるスティールモノコックではなく、アルミ接着構造を用いたクルマである。垂直と水平の頭文字を取って命名されたそのVHプラットフォームは2001年、ヴァンキッシュに初めて採用され、以降全ての量産アストンの基礎となっている。

DB7の成功は、アストンの財務状況を改善し、将来への投資を可能にした。そのためDB9にも、それを生み出す施設にも予算の少なさに苦労した跡が見られず、生産工場は間借りのブロックスハムから、最新設備を揃えたゲイドンへと移った。その洗練性は、アルミシャシーに限ったものではない。キャビンも外装パネルもより完璧に近付き、特別感を高めている。


2003年のフランクフルトショーで披露されるまでに、アストンの高級感に対する認識はずいぶんと変わったようだ。艶やかなニス塗りだったウッドパネルは、緻密なサテンフィニッシュとなりブラシ仕上げのスタイリッシュなアルミ材と組み合わされていた。一方で、レザーをふんだんに張り込み、ルーフライニングにスウェードを奢るのは、今回の3台に共通する普遍的な要素だ。全体的な雰囲気は、建築物を思わせるクオリティと、20世紀後半のモダニズムの上質感が漂う。

後編では、まずDB9のV12を味わってみよう。

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