最高のエンジンを持つクルマたち 後編

公開 : 2018.07.01 06:10  更新 : 2019.05.04 13:03

ホンダS2000

生産:1999〜2009年 価格:7500〜2万5000ポンド(108〜361万円)

大パワーがかんたんには手にはいらなかった時代に、S2000はうまれた。コード名をF20Cという自然吸気4気筒エンジンはあらゆる新技術を取り入れ、モータースポーツゆずりのチューニングもほどこされて、9000rpmという高回転を可能にした。6000rpmでVTECシステムがカムを高回転用に切りえたとたん、耳をつんざく雄たけびと振動とともにリミットめがけて一直線に駆けあがる。そしてトルクこそ21.4kg-mといくぶん細いものの、2.0ℓ自然吸気としては破格の240psのパワーが手にはいるのだ。

1990年代後半のエンジン設計では、パワーをもとめてたよったのはこういう手段だった。信頼性も洗練度も高まったターボチャージャーがあまねく行きわたった20年後のいまでは、大パワーなんていともたやすく手にはいる。9000rpmというリミットラインも超高性能スポーツカーの専売特許になってしまった。

S2000の鮮烈にほとばしるパワーの出かたはポルシェ911 GT3にもひけをとらないが、いまの8000ポンド(115万円)以下で手にはいる安価さはまるで比べものにならない。ただ相場は上がり傾向のようだ。

S2000は運転に没頭してしまう刺激的なクルマだが、出来のほうは完ぺきとはほど遠い。ドライビングポジションはヘンだし、ピーキーな操縦性にくわえて(すくなくとも初期型には)トラクションコントロールが備わらないために、スピンして生け垣に後ろから突っこんだり街灯をなぎ倒したりするケースが続出した。2004年以降、柔らかいばねとスタビライザーに変更されるなどおだやかなシャシー設定に改められ、2006年にはトラクションコントロールもオプション設定された。

F20Cのような強力なエンジンなら、たえず調子に気をくばり、手入れも欠かさずおこなうのは当然のことだ。エンジンオイルは6カ月または9600kmごとに交換が必要だし、1600kmで1ℓ消費することもあるので、オイル交換歴の不明な個体は避けたほうが良い。それでも、幸いに良い1台がみつかれば、いまどきのクルマとはちがったかけがえのない日々をおくれるだろう。

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