試乗 BMW M3 CS F80系に有終の美 高額すぎるスペシャル

公開 : 2018.07.11 10:10  更新 : 2018.07.18 13:34


鈍るダイナミクス性能での輝き

今回のBMW M3 CSは、アルファ・ロメオジュリア・クアドリフォリオと肩を並べるほど張り詰めたボディコントロール性を持ちつつ、正確性や安全性ではより優れている。しかし、ジュリアやメルセデス-AMG C63Sのように、直感的に、本能的に運転できる仕上がりというわけでもないのだ。

より奥行きのあるドライバビリティを備えていることも事実だが、明確な満足感があるともいえない。速いペースでの走行では、ジュリアよりもビジネスライクに実直に応えてくれるものの、落ち着きや、遊び心のようなものは希薄に感じられてしまう。

CSが搭載する直6ターボエンジンは、F80系M3の中では一番の仕上がり。興ざめしてしまう人工サウンドは少し影を潜め、カーボンファイバー製のボンネットの中から響くエンジンノイズは実際的。でも、そのエンジンノイズを直接聞くには、やはり窓を下ろすしかないけれど。

アルファ・ロメオの中回転域の太いトルクや、メルセデスのV8エンジンの唸り声以上に、7000rpmまで回るエンジンのキャラクターやポテンシャルをどこまで正当化することができるかは、好みによるところもあるだろう。

F80 M3もF82 M4も、ともに完成度の高いパフォーマンスを備えたクルマではある。しかし、プレミアムブランドで比較した時、ライバルモデルの水準が上がったぶん、ダイナミクス性能での輝きやカリスマ性は、従来モデルの時代より弱まっているように思う。

ちなみに、CSのスペックシート上は5.1kg-mのトルクが加算されており、0-100km/h加速は4秒を切る俊足となっているが、実際はそれほど速く感じられないことも付け加えておこう。

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