GT-R50やゼロウノ VWが買収後「イタルデザイン」何めざす? 試乗で探る

公開 : 2018.11.11 07:40

見事なエンジニアリング

ゼロウノに乗ってみれば、このクルマが頭で考えるだけで生み出されたようなモデルではないということがよく分かる。このクルマには驚くべき速さとノイズ、さらには剃刀のようなレスポンスに加え、濃密な身体的繋がりまでもが備わっており、ハンドリング、乗り心地、グリップや運転感覚、さらには溢れる剛性感といったものは、非常に厳格なドイツTUVによる型式認定に必要なものを含め、徹底的なテストが行われたことを示している。

今回試乗したのは、5台の市販バージョンの先行モデルであることが明らかなプロトタイプだったが、非常に動きの硬いギアセレクターやプロトタイプゆえのケーブル穴など、いくつか仕上がりの甘い部分はあったが、全体的には完成度の高さを感じさせた。同様に、ゼロウノ・ドゥエルタのプロトタイプも、この才能あふれる1000人余りのスタッフを擁するイタルデザインに期待するとおりの出来栄えだった。

イタルデザインがアウディに属していることを考えれば、このクルマが主にR8をベースに開発されたと聞かされてもさほど驚かないだろう。だが、だからといって、2016年6月にはまだデザインスケッチでしかなかったこのクルマが、わずか14カ月後には実際に走行可能な車両として登場したという事実の価値はいささかも揺らぐものではなく、イタルデザインによる開発作業の迅速さを見事に示している。


ゼロウノはR8のアルミニウム製コアをベースに、アウディスポーツ製V10エンジンにアウディご自慢のクワトロ四輪駆動システムを組み合わせているが、このクルマは完全なオリジナルモデルであり、R8よりもはるかに濃厚なキャラクターを備えた1台となっている。チーフデザイナーのフィリッポ・ペリーニは、ゼロウノは「美しさと野蛮さを併せ持ち、他のモデルとはまったく異なるモデルとして設計されています」と話す。

その美しさとは、R8よりも50mm低いルーフがもたらす「艶やかなアッパーセクションであり、そのボディ下部はエアロダイナミクスを考慮した形状」になっているとのことだ。リアの巨大なダブルデッキ式ベンチュリーシステムや、幅広のサイドシル、さらには、ブレーキ冷却エアを排出するためフェンダー上に穿たれた大胆なベンチレーションスロットといったものに、そうした特徴を見ることができる。こうした部分こそ、リアから顔を覗かせる巨大な305/30 ZR20サイズのピレリタイヤとともに、ペリーニが「野蛮さ」と呼ぶ理由となっているものだ。

フロントにはレースカーのようなスプリッターを備え、その上には1960年代のレースモデルを彷彿とさせる地味なエアインテークが存在しており、ここから侵入した冷却エアはボンネットにあるふたつの開口部から排出される。このY字型の開口部は、チタン製ディフューザーとカーボン製サイドシルとともに、高速域でのダウンフォースを発生させる役目も果たしている。

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