度肝を抜くワンオフモデル マイバッハ・エクセレロ(1) 特注理由は「新タイヤをテストするため」

公開 : 2026.06.20 17:45

タイヤメーカーが特大クーペを特注した理由は、新タイヤをテストするため。マイバッハ57をベースに、V12ツインターボは6.0Lへ拡大。350km/h超を達成したワンオフモデル『エクセレロ』を、UK編集部が振り返ります。

特注理由は新しいタイヤをテストするため

3t近い巨大クーペを突き動かすのは、6.0LのV型12気筒ツインターボエンジン。このマイバッハは、「新しいタイヤをテストするため」特注したと、当時のドイツ人は主張した。アメリカ人ラッパー、ジェイZのミュージックビデオでも、名脇役を務めたが。

マイバッハ・エクセレロの佇まいは、ショーカーそのもの。映画「スター・ウォーズ」に出てきそうに見えなくもない。ドアハンドルの形も、通常と異なる。ところが、ドアは普通に横へスイングし、豪華なレザー・スポーツシートが迎えてくれる。

マイバッハ・エクセレロ(2005年/ワンオフモデル)
マイバッハ・エクセレロ(2005年/ワンオフモデル)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

シートベルトは4点式で、その後方にはヘルメットが用意されている。それでも、ダッシュボードやセンターコンソールは、2002年のリムジン、マイバッハ57の雰囲気へ通じる。ナビが動くモニターが備わり、クルーズコントロールのレバーも見える。

シートへ腰を掛けても、印象は少し昔のマイバッハ。強い驚きがあるとはいえない。

地平線を射抜くように突き進むボンネット

エクセレロは、公へ姿を表した回数が少なく、ご記憶の方は多くないかもしれない。現在は、ドイツ国立自動車博物館に収蔵され、しっかり走れる状態が保たれている。

長いクランキングを経て、V12エンジンは轟音とともに始動。第二次大戦を戦ったレシプロ戦闘機のように、周囲を威圧する。アイドリング時の振動は激しく、特注の内装トリムがガタガタ震える。いわゆる、より高級なメルセデス・ベンツではない。

マイバッハ・エクセレロ(2005年/ワンオフモデル)
マイバッハ・エクセレロ(2005年/ワンオフモデル)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

シフトセレクターは、当時のマイバッハのもの。発進時のアクセルレスポンスは想像よりマイルドで、リムジンのよう。しかし、ターボブーストが高まるにつれ、息を呑む回転上昇が始まる。サウンドも、レーシングカーのような高音の咆哮へ転じていく。

そのまま右足を傾け続ければ、地平線を射抜くように長いボンネットが突き進む。その勢いへ言葉を失いつつ、タイヤは2005年当時のままだと思い出し、力を抜いた。

公道で全力を引き出せるのは、ほんの束の間

拍子抜けするほど、運転はしやすい。ステアリングの反応は不安なほど鈍いが、エアサスペンションが組まれ、乗り心地は素晴らしく快適。運転席からの視界も、充分広い。

全長は5890mmあり、カーブでの扱いには慣れが求められるものの、ヘアピンカーブへ臆せず飛び込めそう。超貴重なワンオフモデルだが、全力を引き出せる自信は程なく湧いてくる。0-100km/h加速は4.4秒で、公道の場合はほんの束の間だけだが。

マイバッハ・エクセレロ(2005年/ワンオフモデル)
マイバッハ・エクセレロ(2005年/ワンオフモデル)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ドアミラーは細いステーで支えられ、いかにも空気抵抗は小さそう。ガソリンを圧送する、燃料ポンプの唸りが車内へ響く。リアサスペンションは、不意にシューッと鳴く。

コンプレッサーは備わらず、エアコンは動かない。ダッシュボード上には、操作パネルがあるけれど。少なくとも、パワーウインドウは滑らかに動き、涼しい風は導ける。燃料キャップは、アウディTT用が流用されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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