氷点下のヒーロー比較試乗 フォルクスワーゲン・ゴルフR vs メルセデス-AMG A35

公開 : 2019.02.23 11:50  更新 : 2019.02.25 11:49

木曜日 午後2時48分:ウッドヘッド貯水池

ウィナッツパスから、レディボワー貯水池とスネークパス東端までのショートトリップは拍子抜けするほど簡単であり、ここへ向かおうにも、もしかしたら全面通行止めになっているかも知れないと思ったが、道端に設置された電光掲示板の表示は「徐行」だった。

300ps以上のパワーと安定感のある四輪駆動シャシーの組み合わせによって、ほとんど躊躇することなく前進を始めると、この2台は雪を蹴散らしながらここまで到達したのであり、歩道には多くの雪が残り、車道にもそれが吹きこぼれてはいたが、雪そのものは降りやんでいた。

まさに、われわれのタイミングは完ぺきだった。暖かな光が注ぎ込む静かな冬のひと時であり、依然としてA57号線の交通量は少ないままだ。

こんなときのスネークパスは素晴らしいドライビングロードだが、時には混雑することもある。それなりの幅で起伏を繰り返すこの道には、左右から強く風が吹き付けているが、グロソップへと続く下りに入ると、開けた直線へと変わり、はるか先のストックポートとマンチェスターへと続いている。

この道を走っていると、まるで英国の背骨を横断しているような感覚に突然襲われ、フロントガラス越しに見える景色の雄大さには、人間というちっぽけな存在を思い知らされることになる。

24kmほど北に位置するウッドヘッドパスに到着した頃には、ふたたび荒れた天気となり、視界も極端に悪化していたが、まさに2台の実力を試す場所としては、相応しい機会だった。


この道のように、広く、滑らかでハイスピードな場所では、多くの肝心なところで、A35がゴルフRをわずかに凌ぐ走りを見せた。こうしたコンディションと冬用タイヤの組み合わせであれば、A35がゴルフよりも強力なメカニカルグリップを発揮するのは当然だが、この2台の差はそれだけには留まらなかった。

引き締まったボディコントロールと節度あるターンインで、A35は滑らかにコーナーへと進入し、波長の長い路面のうねりに対しても見事に追従してみせるとともに、ゴルフよりも本質的な落ち着きと、迫力あるサウンドで活気溢れる高回転型のエンジンが、このクルマの魅力をさらに確かなものにしている。

こうしたさまざまな点から、序盤はA35のほうが優れたドライバーズカーに思えたことで、日暮れとともにこの日宿をとるバクストンへ向け南下を始めたタイミングで、ふたたびゴルフRに乗り換え、この評価が正しいかどうかを検証することにしたのだ。

だが、答えはそれほど簡単ではなかった。いまわれわれは、ウィグトウィズルという忘れられない名前の村と、レディバワー貯水池を結ぶ、小さくも素晴らしいB級路のモーティマーロードを走っている。ここはこれまでよりも道幅の狭い、荒れた路面の入り組んだ道であり、周囲には木々が生い茂り、狭い橋が行く手を阻んでいる。

ここでのゴルフRは、A35にはないコンパクトさとしなやかさを感じさせ、さらに、ブラインドコーナーではA35よりも対向車に注意を払う必要があるかも知れないが、サマータイヤでもグリップに問題はなかった。

その後たどり着いたバクストン郊外で、ゴルフRは小さく鋭い路面不整にも見事な対応を見せるとともに、市街地ではA35を凌ぐ乗り心地を味わわせてくれた。低速でのゴルフRのサスペンションは驚くほどしなやかで、そのペダル操作とシフトに対する反応は完ぺきとも言えるものだった。

ドライバーの求めに応じて、毎日乗れるモデルに相応しい、安楽で目立たない走りをすることも可能であり、そんなときは、まるでスタンダードなゴルフのように感じさせる。対照的に、A35にそんなことを望むのは不可能であり、何処へ行こうと、このクルマは自身の存在を主張しないわけにはいかない。

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