「中国のイーロン・マスク」 Nio社CEOインタビュー 新たなユーザー体験重視

公開 : 2019.06.08 09:50

勝算は50%以上 目標は高く

「こうしたシステムには、多くの開発コストが掛かっています」と、リーは言う。さらに、こうした技術こそが、顧客優先の彼らのコンセプトを代表するものであり、テスラといったメーカーとの違いを示していると付け加える。「テスラは技術だけに注力しているのだと思います」と、リーは話す。「3000以上の特許を保有するなど、われわれにも優れた技術はありますが、われわれにとって重要なのはひとであり、ユーザーなのです。製品があり、優れたサービスがあれば、ユーザーはわれわれを支持してくれると信じています」

優れたサービスというものは、Nioのアプリをベースに構築されたコミュニティーにも見て取ることができるが、こうしたコミュニティーの存在が、Nioのサービスやサポート体制を、さらに魅力的にしている。

5万5000ポンド(752万円)というES8の平均販売価格について、リーは、中国製プレミアムブランドに対する需要の存在を示していると話している。「誰もわれわれのクルマを高いとは思っていないのです。これは興味深いことです。実際には、高価なモデルですが、適正価格だと思って頂ければ、それはつまり、ひとびとがNioをプレミアムなブランドだと評価したことになるのです」

これまでに、1万5000台以上のES8が販売されており、Nioにとって、短期的な目標は、中国市場における安定的な成長だという。つまり、さらなる販売台数が必要だということだが、それでもリーは、「多くのモデル」が開発中であるとしながらも、既存の自動車メーカーほどモデルラインアップを拡充させるつもりはないと言う。


リーはNioをグローバルな存在にしたいと考えているが、それでも、そのためには「我慢が必要です」とも話しており、重要となるのが、各国市場でNioを際立たせる違いを見つけ出すことだと言う。「英国のような市場は中国とはまったく異なります」と、彼は言う。「ですから、英国のお客様がどういったことを望んでいるのか、そしてわれわれは、どんな新しい体験をお客様に提供できるかが重要なのです」

リーの慎重な姿勢も十分に理解できる。ここ数カ月、中国新車市場全体の苦境によって、Nioの販売は減速しており、米国では雇用の削減にも踏み切っている。その結果、投資家のなかには懸念が広がっており、改めて、Nioもまだ不安定なスタートアップに過ぎないことが意識され始めている。

Nio創業当時、リーは長期的な成功の可能性を「約5%」だとしていた。現時点で、改めて成功の見込みをリーに質問すると、リーは51%だと答えてくれた。「50%以上の確立ですが、それでもまだ十分ではありません」と、彼は笑顔を見せながら言う。「自動車業界というのは、スタートアップにとって、もっとも厳しい場所です。簡単に成功など掴むことはできません」

弱気に聞こえるかも知れないが、リーの目標はハッキリとしており、それは決して中国版テスラになることなどではない。

「世界最高の自動車メーカーと競い合える存在になりたいと考えています」と彼は言う。「テスラだけでなく、BMEやアウディ、メルセデスといったメーカーが目標です」

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