まるで原寸大ホットホイール AC 3000ME & TVRタスミン(1) 初代オーナーはピーター・ウィラー 履歴も稀有な共通点

公開 : 2026.05.09 17:45

英国のスポーツカー・ブランドの転換期に生まれた、3000MEとタスミン。小ぶりなボディへV6エンジンを積み、想像以上に楽しい運転体験を叶えていました。UK編集部がレアな2台を振り返ります。

スポーツカー・ブランドの転換期だった1980年代

1980年代の英国には、スポーツカー・ブランドの転換期が訪れていた。ジャガーEタイプやMGBといった、定評を築いたモデルの魅力的な後継不在の隙を突くように、小規模メーカーが大胆な新モデルを次々に投入していった。

このタイミングを上手く掴んだのは、ロータス。エリートやエスプリを提供し、ブランドの地位は向上していった。同時にACカーズやTVRも、明確な進化を果たした新世代を生み出した。3000MEとタスミンという、個性的な2台だ。

ホワイトのAC 3000MEと、レッドのTVRタスミン 2.8i S1
ホワイトのAC 3000MEと、レッドのTVRタスミン 2.8i S1    マックス・エドレストン(Max Edleston)

今回ご登場願ったレッドの1台は、TVRを率いたピーター・ウィーラー氏が、初代オーナー。ホワイトの方は、ACカーズのデモカーを、トップだったデレク・ハーロック氏が買い取ったもの。履歴でも、稀有な共通点を秘めている。

利益を生むモデルが必要だったACカーズ

シェルビーとともにコブラを生み出したACカーズは、1970年代に満足いく利益を生むモデルを擁していなかった。軽量・安価なスポーツカーが必要だと理解していたハーロックは、同僚のキース・ジャッド氏に諭され、1台のプロトタイプを開発する。

1972年の英国レーシングカー・ショーで提案されたのが、「ディアブロ」。そのオリジナルは、ローラ社で手腕を発揮したピーター・ボハンナ氏とロビン・ステイブルズ氏によって作られた、1.5L 4気筒エンジンの小さなミドシップだった。

AC 3000ME(1979~1985年/英国仕様)
AC 3000ME(1979~1985年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

そこへハーロックが参画し、ACカーズの技術でアップデート。エンジンは、フォード由来の3.0L V型6気筒エセックス・ユニットへ置換され、140psと24.0kg-mが与えられた。小柄なFRP製ボディには、不満ないパワーといえた。

アルミ製ケースに独立したオイルパンを備えた5速マニュアルは、ヒューランド社製ギアを組んだ、ACカーズによる独自開発。トリプル・チェーンを介して動力は伝えられ、フェラーリのようなオープンゲートから伸びるレバーでギアを選べた。

納車は6年も遅れ、価格は大幅に上昇

ロールオーバーバーが一体のスチール製モノコックの前後に、チューブラー・サブフレームが組み付けられ、サスペンションは両側でダブルウイッシュボーン。アンチダイブ機構を備えつつ、アンチロールバーは不要とされた。

全長3988mmと短いボディながら、後方には手荷物を積める荷室が備わり、前方には脱着式のルーフパネルを収納できた。価格は、当初4000ポンド以下が想定された。

AC 3000ME(1979~1985年/英国仕様)
AC 3000ME(1979~1985年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

1973年のロンドンモーターショーで、量産版となるAC 3リッターはお披露目される。しかし、成形用金型の開発に問題が生じ、型式認証の衝突試験へも対応できず、生産は大幅に遅延。納車が始まったのは、6年後の1979年になってからだ。

モデル名は3000MEへ改められつつ、インフレが重なり、価格は1万1300ポンドへ上昇。不況に苛まれていた英国では、娯楽志向のクルマへの需要は落ち込んでいた。エスプリへ迫る価格で、年間250台を売りさばくことは困難といえた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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