ルノー・スマートアイランド構想 ポルトガル現地ルポ 真のゼロエミッションへ

公開 : 2019.07.07 16:50

目標は脱化石燃料 カギはEV

それでも、いま島内を走る20台のルノー製EVのうち、こうしたバッテリーからの電力供給が可能なハードウェアを備えているのはわずか2台にすぎないため、現時点での電力供給量は非常に限られている。だが、こうした状況に変化をもたらすため、最近ルノーは島民に対する販売支援策を発表しており、まず20台が政府機関とタクシー向けに納入される予定だ。

ポルト・サントの狙いは、化石燃料の使用量をゼロにすることだと、マデイラ地区で経済担当のアシスタントディレクターを務めるパトリシア・ダンタスは話しており、そのため、電力グリッドに繋がれた発電機を稼働させるため、いま使用している毎年50万ℓものディーゼル燃料を徐々に削減し、最終的には完全に無くす予定だという。

これは、2020年までにCO2排出量を1990年レベルの20%にまで削減するという、欧州20-20-20戦略の一環であり、この戦略では、全電力消費量の20%を再生可能エネルギーで賄うという目標も定められている。

目標達成への道のりは簡単ではない。それでもポルト・サントでは、太陽光が11%、風力が5%と、再生可能エネルギーが電力需要全体の15%を賄っており、さらに、電力グリッドに繋がれたEVの助けも借りて、太陽光と風力にとって理想的な地理的条件を持つこの島で、それぞれの発電方式は拡大を続けている。


EVを電力グリッドに接続することの効果は大きいと、ルノーでEVプログラムの責任者を務めるエリック・フュントゥンは、例を挙げて説明している。

2018年5月13日、ドイツは好天に恵まれ、十分な風も吹いていたが、重要なのはこの日が日曜日だったことだと彼は言う。つまり、平日に比べ極端に電力需要が少ないにもかかわらず、グリッドに大量の再生可能エネルギー由来の電力が流れ込んだことで、結局そのほとんどが使われることなく無駄にされたというのだ。

「グリッド上で電力需給のバランスを取ることが出来なかったからです」と、フュントゥンは言う。「風力発電をグリッドから切り離さなければならなかったにもかかわらず、それでも、その発電した電力に対しての支払は行われます」

こうした状況が頻繁に発生することで、グリッド運営者もEVに対する考え方を変えている。「非常に集合的な発電システムを持つグリッド運営側からすれば、EVというのは決して好ましい存在ではありませんでした」と、フュントゥンは話している。

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