【ボルボのガラス製ギアセレクター】まさに工芸品 感じるのは深い繋がり? 前編

公開 : 2019.12.22 05:50

ボルボではいまガラス製ギアセレクターが人気のオプションとなっています。数百年の伝統を持つ技法からハンドメイドで創り出されたこのギアセレクターを選択しても、シフト時間が短縮されることはありませんが、テクノロジーを超越した何かを感じることが出来ると言います。

スカンジナビアの伝統

スウェーデンの小さな街、コスタでガラス産業の歴史が始まったとき、まさか自らが自動車のギアセレクターを創り出すことになるとは誰も思いもしなかっただろう。1742年にこの伝統工芸が生まれたとき、自動車部品など存在すらしなかったのだ。

だが、その277年後、コスタのガラス工房はボルボのギアセレクター造りに多忙を極めている。

ボルボのガラス製ギアセレクター
ボルボのガラス製ギアセレクター

もちろんここで創り出されるのはありきたりなギアセレクターなどではない。オレフォス・クリスタル・アイが、ほぼ18世紀当時の道具と技法によって、クリスタル・ガラスからハンドメイドで創り出したものだ。

こうして生み出されたギアセレクターは当然のように美しく思わず魅了されるが、一方で、こうしたギアセレクターにはまったく必要性などない。

通常のギアセレクターからこのガラス工芸品に替えても、XC90インスクリプションのシフト時間が短縮されることはないのだ。

だが、こうしたハンドメイドによって創り出されたギアセレクターの人気はますます高まっており、ボルボではオプション選択可能なモデルをさらに増やしつつある。

「自動車業界以外からのアイデアを取り入れたいと考えていました」と、話すのはボルボでカラーとマテリアルのデザイナーを務めるアンダース・ベリストロームだ。

「スカンジナビアの伝統を活かしたいと考えていたので、クリスタル・ガラスを使うことを思い付いたのです」

素晴らしい選択

ギアセレクターとは素晴らしい選択だったとベリストロームは言う。

「ギアセレクターにはそれなりの大きさが必要であり、クリスタル・ガラスの美しさを見事に発揮することができます。キャビンの中心に位置し、ドライバーが触れることでその質感を感じるとともに、楽しむこともできるのです」

溶けたガラスがクリスタルへと姿を変えるが、アトウッドの手によってではない。
溶けたガラスがクリスタルへと姿を変えるが、アトウッドの手によってではない。

驚くべきことに、このアイデアの実現には10年が必要だったと言う。その理由を探るべく、クリスタルの王国、スウェーデンのガラス工芸の中心地であるスモーランド地方奥深くへと向かうことにした。

シリコンを豊富に含んだ砂と、燃料としての木材が大量に存在したことが、この地でガラス工業が栄えた理由であり、この地域には数多くのガラス工房が点在している。

コスタという街の名は、ここでガラス工房を開いた人物にちなんで名付けられたものだ。

1898年には近隣の街、オレフォスにも工房が開かれている。

オレフォスとコスタ・ボダのふたつの工房は1990年に合併し(合従連衡というのはなにも自動車業界の専売特許ではない)、2013年以来、コスタの街でハンドメイドによるガラス製品作りが行われている。

期待に違わず街はガラス産業一色だった。

例えば、コスタのアート・ガラス・ホテルにはガラス・バーがあり、朝食のビュッフェにはガラスで出来たフードが置かれるとともに、ベッドサイド・テーブルの上にはガラス製の置物が飾られていた(子供向けではないだろう)。

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