【奥深きカモフラージュ】クルマの試作車の偽装 パターンはさまざま 深い役割も

公開 : 2019.12.21 05:50  更新 : 2019.12.21 12:16

視線をごまかす

アストンは新型ヴァンテージで初めて専用のカモフラージュデザインを採用している。それはアストンの古いロゴと、あの幻惑迷彩模様の軍艦からアイデアを得てホルゲートがデザインした「クレージー・クリスクロス・ストライプ」というものだった。

さらにその配色も単なる白黒から、レースカーのヴァンテージGTEが採用していた目の覚めるようなグリーンへと変更されている。

サム・ホルゲートがデザインするカモフラージュは、同時にアストンであることをも主張する。
サム・ホルゲートがデザインするカモフラージュは、同時にアストンであることをも主張する。

「この色がロードカーとサーキットモデルの双方に似合うことが確認出来ました」と、ホルゲートは付け加えている。

DBXの初期テスト車両ではヴァンテージと同じカモフラージュデザインが採用されていた。

だが、初めて「相応しい」プロトタイプ車両によるテストが始まると、「モデルの開発状況を示すために、カモフラージュに変化をもたらすというのは良い考えのように思えたのです」とホルゲートは話す。

そのために、ホルゲートはDBXというモデル名を、まるでオフロードタイヤのトレッドパターンのように配置したデザインを考え出している。

カモフラージュのデザインに厳密な法則などないことを彼は認めており、車両の真の姿を覆い隠すようなシャープなエッジやパターンといったものを創り出すだけだと言う。

「デザインの目的は視線をごまかすことにあります」と、ホルゲートは言う。

「タイルのようなパターンを創り出して、A0サイズのビニールシートに印刷するのです。これをクルマに貼り付けると、その大きさと特徴的なラインを無視したさまざまな角度の線によって、真のスタイリングをイメージすることはほとんど不可能になります」

スピードも重要

ホルゲートは通常こうしたカモフラージュのデザインを2次元で行うが、時には仕上がりを確認するため3次元イメージを使うこともあると言う。

こうして出来上がったビニールシートが車両に貼り付けられた後、パートナーのロゴやその他のデザイン要素が追加される。

カモフラージュをほどこすにはグリルは大きすぎた。
カモフラージュをほどこすにはグリルは大きすぎた。

「パターンは非常に複雑にしたいのですが、簡単に展開できるものでなくてはなりません」と、ホルゲートは言う。

「テストを終えて工場へ戻ってくると、しばしばパーツの交換作業が発生するために、毎回新たなシートに張り替える必要があるのですが、パーツを交換したことが一目瞭然になるようなマネはしたくないのです」

作業に掛かるスピードも重要だ。テストや開発のための時間は限られており、アストンのテストチームは、複雑なシートが貼り終わるのをただ待っているようなマネはしたくないと思っている。

まるで彫刻のようなアストン マーティンのモデルでは、そのラインをごまかすというのが非常に難しいために、彼らは「より分かり難く」偽装を行うためのパーツとして、車両に貼り付けるスポンジ状のブロックも使用している。

ビニールシートはこうしたブロックの存在を分からないようにする効果も担う一方、照明類は法律上必要最低限な範囲を残してすべてカバーされることになる。

それでも、どうしても覆い隠すことが出来ない特徴というものは残るのであり、ホルゲートもその点は諦めているようだ。

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