ロードテスト ロールス・ロイス・カリナン ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2020.03.01 11:50  更新 : 2020.03.08 03:15

意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆

ロールス・ロイスは、貴族主義な魅力と、これみよがしな下品さの境界線を踏み外さず、しかも上品さを兼ね備えたクルマづくりで、素晴らしい歴史を築いてきた。ところがカリナンでは、そのヴィジュアル面の繊細なバランスが失われてしまった。

エクステリアのキーとなるのがプロポーションだ。全長は5.34mで、全幅は2mと、ファントムVIIIより短く狭い。しかし、ルーフラインは長く伸び、1.82mもの高さがある。

6.75LのガソリンV12ツインターボは、標準仕様では571ps/86.9kg-mを発生するが、ブラックバッジは599ps/91.8kg-mまで増強される。
6.75LのガソリンV12ツインターボは、標準仕様では571ps/86.9kg-mを発生するが、ブラックバッジは599ps/91.8kg-mまで増強される。    OLGUN KORDAL

ロールス・ロイスには、誰もが味わい深いと思うようなデザイン言語が必須だ。そこが重要なのだが、カリナンのプロポーションは、その限界を超えてしまった。

今回のブラックバッジ仕様は、赤いブレーキキャリパーやブラッククローム仕上げのスピリット・オブ・エクスタシー、ダークカラーのパンテオングリルといったスポーティなアイテムを装着。それらは、先に受けた印象を確固たるものにするだけだ。

ロールス・ロイス初となる四輪駆動モデルのメカニズムは、デザインよりも真価のわかりやすいものだ。6.75LのガソリンV12ツインターボは、標準仕様では571ps/86.9kg-mを発生するが、ブラックバッジは599ps/91.8kg-mまで増強される。

駆動方式は前後トルク配分50:50の4WDで、ZF製の8速AT、強化版のプロペラシャフトとドライブシャフトを介して四輪へ怪力を送り込む。ブラックバッジ専用チューンで、スロットルレスポンスも鋭さを増している。

シャシーはアーキテクチャー・オブ・ラグジュアリーと銘打たれた、ファントムVIIIで導入されたオールアルミのスペースフレーム。それをベースに設計を見直し、量産ロールス史上初のテールゲートが与えられた。アクティブ4WSや、48V電源で駆動するアクティブアンチロールシステムも備わる。

サスペンションも、専用アクスルに合わせて再設計。フロントは新型のダブルウィッシュボーン、リアはマルチリンクだ。既存の自動車高調整式エアサスペンションにはボリュームの拡大されたエアストラットを追加し、オフロードでの衝撃吸収能力向上を図った。また、電子制御エア圧縮システムは、ダンパーないの空気圧を高め、トラクションを失ったタイヤを路面に押し付けることもできる。

ブレーキペダルの効きはじめるポイントは手前に引き上げられ、ペダルフィールは高速走行時にも自信を持って踏めるよう再チューン。ブレーキの冷却性能も高められた。

それらにも増して注目すべきは、これが実測2739kgもあるクルマだということだ。超ラグジュアリークラスにおいても、かなり重い部類に入るといえる。

だがしかし、この愚かなほどの肥満ぶりを非難する前に思い出してほしい。2年前にテストしたファントムは、これより41kg重かったことを。

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

ロールス・ロイスの人気画像