【ベストを目指せる可能性】ルノー・メガーヌR.S.280 最終回 長期テスト

公開 : 2020.05.16 11:50  更新 : 2021.03.05 21:34

自分好みのドライビング・モード

もしこれで、車内の設計や利便性も同等の完成度なら、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIの真のライバルとして見ることができるはず。高速道路でも、日常的な興奮が楽しめるクルマとして。

しかしメガーヌR.S.280は、驚くほど考え抜かれたゴルフGTIのように、一緒に暮らしやすいクルマではなかった。基本のメガーヌがゴルフに並ぶまで、難しいのだろう。

ルノー・メガーヌR.S.280(英国仕様)
ルノー・メガーヌR.S.280(英国仕様)

日常的にメガーヌに乗っていると、気になる部分が強調されて感じることがある。一方で、当初疑問に感じた部分のいくつかは、長く接しているうちに改善できることもわかった。

例えば、クルマに乗るたびに聞こえる、ウェルカムサウンドのような賑やかなエンジンノイズ。インフォテイメント・システムを介して、オフにできると気付いた。

尖すぎる四輪操舵システムと、破裂音も混ざる荒々しいエグゾーストノート。郊外の一般道では、場面によっては楽しめる。

ドライビング・モードを戻し、ステアリングとパワートレインの設定を穏やかにすれば、メガーヌR.S.280は常に直感的に操れる。運転もしやすいし、日常の足にもなる。

スポーツ・モードとレース・モードで数回の小旅行を楽しんだが、残りの時間はすべて個別に設定を登録したプレスト・モードのままにした。それで充分に楽しめた。

ルノーは、インテリアのスイッチ類の配置が個性的だ。以前から。クルーズコントロールのスイッチも奇妙な位置に付いている。ステアリングコラムの見えない位置に、ステレオのリモートコントローラーがついている。どちらも慣れてしまえば問題ない。

ベストを目指した改善に期待したい

だが、どうしても慣れなかったのが、オフセットしたドライビングポジション。ステアリングホイールと、メーターパネルが直線状に並んでいないのだ。

キーレスエントリー・システムも。助手席側に置いたカバンからカギを出そうとすると、不要にロックされることがあった。

ルノー・メガーヌR.S.280(英国仕様)と英国編集部
ルノー・メガーヌR.S.280(英国仕様)と英国編集部

大きな問題ではないかもしれない。かといって見逃せる課題でもない。欧州の自動車メーカーで、このような弱点を持つモデルは、ほかにどのくらいあるのだろう。

一方で、最高の条件が揃った時、メガーヌR.S.280ほど楽しませてくれるホットハッチは、非常に少ない。しかも価格は3万ポンド(405万円)以下。開けた道では、存分に運転を満喫できる。

筆者の知る、過去の最高のメガーヌR.S.には届いていない。クルマ好きに響くモデルとして、変化を加えながも俊足なメガーヌを絶やさないルノー。R.S.は、ルノー・スポールの持つ強みが付加され、オリジナルのルノーが持たない部分を補完している。

フォルクスワーゲン・ゴルフGTIを忘れて、メガーヌR.S.280の持つ素晴らしい部分に注目するのが良い。エンジンを見直し、シャシーとステアリングに慎重なチューニングを再び与えれば、過去のベスト・メガーヌに並ぶ訴求力も得られるだろう。

まだ改善に許された時間はたくさん残っている。世界で最良のホットハッチを作りたいという強い意思があれば、ルノー・スポールならできるはずだ。

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