タイヤの達人がブリヂストンで訊いた「深い話」(前編:ゴムの技術) 引っ張っても千切れないのは天然ゴム?合成ゴム?
公開 : 2026.08.14 17:05
ブリヂストンがメディア向けに勉強会『ゴムの技術と走る実験室としてのモータースポーツ』を開催しました。なかなか知ることのできない深い話を、タイヤの達人斎藤聡が前後編にわたってみっちりじっくりレポートします。
天然ゴムと合成ゴムと充填剤
ブリヂストンによる『ゴムの技術と走る実験室としてのモータースポーツ』と題した、メディア向け勉強会が開催されたので前後編に分けてレポートしたいと思います。
講義していただいたのは、同社執行役CIOの草野智弘氏と、執行役CPO兼グローバルモータースポーツ管掌の今井弘氏のおふたりです。

まずはひとつ目のテーマである、『ゴムの技術』の話から。
タイヤの材料は、タイヤ1本を考えてみると、その3/4が天然ゴムと合成ゴムと充填剤でできていて、残り1/4が鋼材や補強繊維、配合剤となります。
天然ゴムと合成ゴム、充填剤は、大雑把にそれぞれ1/4ずつと考えていいと思います。
タイヤに使われるゴムは、大別して天然ゴムと合成ゴムがあります。
天然ゴムは、パラゴムの木から得られるラテックスを凝固させて作ります。
合成ゴムは、まず、石油精製品であるナフサから、ゴムの元になる小さな分子(モノマー)である『スチレン』や『ブタジエン』を作ります。これらを化学反応(重合)することで『スチレン・ブタジエンゴム(SBR)』や『ブタジエンゴム(BR)』という合成ゴム(ポリマー)ができるのです。
千切れやすいのはどっちのゴム?
近年では、CO2削減の観点から脱石油化が注目されています。ですが、ことタイヤのゴムに関していうと、剛性ゴムと天然ゴムにはそれぞれ特性があり、天然ゴムだけのタイヤにはまだ課題が多く残っているため、すべてのタイヤを天然ゴム由来のタイヤにするのは難しいのが現状です。
その例としてブリヂストンが用意してくれたのが、3つのゴム片です。

Aは天然ゴム。引っ張ると伸びるけれど千切れません(千切れにくい)。
Bは合成ゴム(SBRだそうです)。引っ張ると比較的簡単に千切れてしまいます。
Cは合成ゴム+カーボンブラックです。このゴム片は、強く引っ張っても千切れませんでした。
冒頭の、タイヤのゴムの構成で触れた充填剤が、ここではカーボンブラックに当たります。タイヤにカーボンブラックを入れる理由は、ここにあるのです。
千切れなければいい、という訳でもない
ところで、なぜ天然ゴムは引っ張り強度が高く、合成ゴムは弱いのでしょうか。
これが自然界の不思議なのですが、合成ゴムは、分子の並び方が全部同じ向き(100%シス構造)になっていて、よく伸び千切れにくいのです。

ところが、合成ゴムで100%シス構造を作ることはできないのだそうです。分子の並びがところどころ反対、あるいはひっくり返ったものが混じってしまい (トランス構造)、そこで分子が分断してしまうので、千切れやすくなってしまうのです。
充填材としてのカーボンブラックは、切れた分子同士をつなぐ役割を果たして、ゴムの強度を高めてくれる役割を果たしています。
それならば、わざわざ合成ゴムにカーボンを混ぜなくても、天然ゴムでタイヤを作ればいいじゃないか。そう思った人も少なくないでしょう。
ところが、天然ゴムは、引っ張り強度は高いのですが、耐摩耗性が悪いのです。つまり、ドライ路面でのグリップ性能は高いけれど、ウエット路面では低い特性を持っています。そのため、タイヤに求められるロングライフ性とか、ウエットグリップを確保するのが難しいのです。
そこで、カーボンなどの充填材を補強材として使った合成ゴムが必要になってくるわけです。






















