【飼い慣らされた野生】ランボルギーニ・ウラカン・エボ・スパイダーへ試乗 後編

公開 : 2020.05.15 10:20

効果的ながら不自然さの残るLDVI

路面のわだちや波打ちを見事に均し、ラインを乱すことなくコーナリングをこなす。ウルトラ・フラットと呼べるほどの仕草だ。

舗装の剥がれた穴を通過すれば、流石にルーフのないボディへ振動を伝えてしまうこともある。でも、それ以外ほとんどの時間は、クーペと同等の強固さを実感できる。

ランボルギーニ・ウラカン・エボ・スパイダー(英国仕様)
ランボルギーニウラカン・エボ・スパイダー(英国仕様)

パワーデリバリーはリニアで、予想が付きやすい。LDVIのモニターを信じれば、フロントタイヤはほとんど駆動されることはないようだが、トラクションとグリップ力は凄まじい。

後輪操舵システムは、トルクベクタリングと同調して機能している様子。恐らく速度感応式のステアリングも連携しているようで、挙動にはどこか不自然さも残っている。例えば均一な円弧を描くようなコーナリングでは、本来より直感性に欠ける印象がある。

フロントノーズは、コーナーのエイペックスを執拗に追いかける。ウラカン・エボとして狙った性格と考えられるが、初期のステアリングレスポンスにはデジタル感がある。フロントタイヤの感触も、ライバルと比較するとドライバーを鼓舞してくれるほどではない。

カーボンセラミック・ブレーキは標準装備。効きは強力だが、サーボの効きも強すぎる。リズムカルに運転することが難しく感じる場面がある。サスペンションは、最も柔らかくなるストラーダ・モードでも、硬すぎると感じた。

モダン・ランボルギーニを象徴する

ランボルギーニ・ウラカン・エボ・スパイダーと、マクラーレン720Sスパイダー、フェラーリF8トリブート・スパイダーのどれを選ぶべきか。3台を比較していくと、とても異なる性格付けだとがわかる。

ランボルギーニは、マクラーレンへ純粋さや微妙なニュアンスで及ばない。フェラーリ並みの、自由自在のハンドリングは得ていない。

ランボルギーニ・ウラカン・エボ・スパイダー(英国仕様)
ランボルギーニ・ウラカン・エボ・スパイダー(英国仕様)

しかし、圧倒的な破壊力を持つ自然吸気V10ユニットの力を完全に解き放てる、万全を備えたシャシーがある。表層的なドラマチックさも濃い。

ランボルギーニの強みが、すべての人の嗜好に合致するわけではないだろう。しかし、極めてランボルギーニらしいといえる。ドライバーを陶酔させ、依存させてしまう力としては、ウラカン・エボ・スパイダーに勝るライバルはいないのではないだろうか。

50年後、ランボルギーニが自社の記念展を開催するのなら、このパールオレンジのウラカン・エボ・スパイダーは、ピカピカに磨かれて出展されるに違いない。飼い慣らされた野生動物。あらゆる面で、モダン・ランボルギーニを象徴する1台だ。

ランボルギーニ・ウラカン・エボ・スパイダー(英国仕様)のスペック

価格:21万8137ポンド(2901万円)
全長:4520mm
全幅:1933mm
全高:1180mm
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:3.1秒
燃費:7.0km/L
CO2排出量:338g/km
乾燥重量:1542kg
パワートレイン:V型10気筒5204cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:640ps/8000rpm
最大トルク:61.1kg-m/1900-5000rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

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