【SUV隆盛なのに……】なぜ三菱パジェロは、日本仕様の生産を終えるのか? コアなファンが離れ懸念

公開 : 2020.07.31 05:50  更新 : 2021.10.22 10:15

パジェロ製造株式会社で生産されてきたデリカD:5とアウトランダーは移管しますが、パジェロのアナウンスはありませんでした。SUV全盛の時代に、なぜパジェロはピークの10%を下回るのか。周辺事情を考えます。

パジェロ製造株式会社の生産停止

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)

三菱のオフロードSUV「パジェロ」は、2019年8月に日本国内仕様の生産を終えた。

この後、東南アジア諸国、オーストラリア、中国向けなどは生産を続けたが、三菱の2020〜2022年度中期経営計画では、生産体制再編としてパジェロ製造株式会社の生産停止が盛り込まれた。

パジェロ製造株式会社は、三菱自動車が100%出資する完全子会社で、これまでパジェロ、デリカD:5、アウトランダーなどの生産をおこなってきた。

この内、デリカD:5とアウトランダーについては生産を岡崎工場に移管するが、パジェロに関してはアナウンスされていない。

三菱自動車に尋ねると「今後の商品展開は未定だが、パジェロの生産をおこなっているのは、今はパジェロ製造株式会社のみ」だという。

つまり海外では生産しておらず、生産移管の話も出ていないので、パジェロ製造が稼働を停止すればパジェロの生産も終わる。

そこでなぜパジェロが終了してしまうのかを改めて考えたい。

今のノートと同等の売れ行きだった

最近はライズ、ハリアーRAV4などSUVの人気が高い。

根本的な理由は、SUVがワゴンと同様の優れた居住性や積載性を備えながら、外観もカッコイイと感じるユーザーが増えたためだ。

大径タイヤを装着して、フロントマスクにも厚みがあり、存在感を強めた。

SUVがこのような外観を備えるのは、もともと悪路の走破を目的に誕生したからだ。大径タイヤ、高めの車高などにより、悪路のデコボコも乗り越えやすい。

駆動方式は、以前は後輪駆動をベースにした4WDで、駆動力の伝達効率が優れている。プラットフォームやサスペンションの耐久性も高い。

これらの相乗効果で、SUVは悪路走破力を向上させてきた。

このようなSUVが注目を集めた発端こそ、1982年に発売された初代パジェロであった。

それまでのオフロードSUVに比べると、外観はシンプルで内装は乗用車感覚を強め、40年近くを経た今見ても洗練されている。

パリ・ダカールラリーにも参戦して、1985年には乗用車部門で優勝を飾った。これを上手に宣伝に活用したことで、パジェロの認知度と人気を一層高めている。

パジェロの絶頂期は、1991年に2代目にフルモデルチェンジした直後であった。

バブル経済は終末を迎えていたが、今に比べると景気は良く、パジェロは1992年に約8万4000台(1か月平均で約7000台)を登録している。

パジェロが今日のノートと同等に売れていた。

ところがこの直後、パジェロの売れ行きは急落していく。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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