巨大なブリキのおもちゃ『A70ヘレフォード』 ライバル不在で成功『ヴァンガード』 75年前の月並みサルーン(2)

公開 : 2026.02.14 17:50

年月とともに趣が増すファミリーカー ジャガーへ並ぶ話題を集めたヴァンガード イメージ刷新を図ったヘレフォード 当時は優秀な動力性能 75年前の有りふれたサルーンをUK編集部がご紹介

巨大なブリキのおもちゃのような見た目

オースチンA70ヘレフォードのボディは、幅が狭く背が高く、直線は殆ど見当たらない。大人6名での乗車を想定するが、巨大なブリキのおもちゃのように見える。前後のトレッドは先代のA70ハンプシャーから広げられ、ホイールは16インチを履くが。

ボンネット先端には、フライングAと呼ばれる尖ったマスコット。盾型のフロントグリルが直立し、テールは見事に丸い。フロントフェンダー上部には、「オースチン・オブ・イングランド」のロゴが誇らしげに輝く。

オースチンA70ヘレフォード(1950~1954年/英国仕様)
オースチンA70ヘレフォード(1950~1954年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

テールランプやリアウインドウは、スタンダード・ヴァンガードと同様に、驚くほど小さい。カーブした巨大なトランクリッドは、下ヒンジで開く。

2台とも、内装は簡素で寂しさを覚えるほど。シートはフラットで、ドアノブはディナーナイフのよう。スチール製ダッシュボードに、必要なだけのメーターが並ぶ。6シーターを実現するためコラムシフトが採用され、シルクハットを被れるほど天井は高い。

輸出を見据えた左右対称のダッシュボード

A70ヘレフォードでは、時速90マイル(約144km/h)まで振られたスピードメーターが中央。補機メーターが両サイドを固め、スイッチにはベークライト製のノブが付く。左右対称なことで、右ハンドルと左ハンドル、両方へ対応している。

ヴァンガードは、運転席の正面へメーターパネルが備わるが、ダッシュボード自体は左右対称。グローブボックスと交換すれば、左ハンドル仕様にできる。横へ飛び出すウインカー、セマフォーのスイッチが、ステアリング中央に備わる。

オースチンA70ヘレフォード(1950~1954年/英国仕様)
オースチンA70ヘレフォード(1950~1954年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ダッシュボードの位置が高く、丸いボンネットが前方視界にかかるのは、A70ヘレフォードと同じ。フロントガラスが低く、ワイパーは驚くほど小さい。特にヴァンガードは、1953年登場のフェイズ2まで、分割ガラスが採用されていた。

どちらも運転席の調整はできず、フリーサイズ仕様。トランスミッショントンネルが大きく、駐車時には大径のステアリングホイールへ力を込める必要がある。

意外に広い車内 当時としては優秀な動力性能

ヴァンガードの方が小回りは効くが、当時の基準でいえば、A70ヘレフォードも扱いにくいサルーンではなかった。柔らかく上下するサスペンションと、サイドウォールの厚いタイヤのおかげで、乗り心地は優しい。車内は意外に広く、居心地が良い。

ブレーキングで、ノーズが大きくうなずく。カーブへ飛び込むと、A70ヘレフォードはボディロールが若干控えめ。アンダーステア傾向なことは、共通する特性だ。

スタンダード・ヴァンガード・フェイズA1(1948~1952年/英国仕様)
スタンダード・ヴァンガード・フェイズA1(1948~1952年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ホイールベースの短いヴァンガードの方が落ち着きで及ばず、制動力も劣る。しかしエンジンは低域トルクが太く、心地良いサウンドを響かせ、1名乗車なら2速で発進できる。曖昧なレバーを動かし4速へシフトアップすれば、100km/hで巡航できる。

A70ヘレフォードは、48km/hから80km/hまでの中間加速を9秒でこなした。当時としては優秀な動力性能といえ、AUTOCARは「活発」だと表現している。2台とも、最高速度は130km/hがうたわれた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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