【詳細データテスト】BMW M2 ミドシップ勢に肉薄するハンドリング ハードでもしなやかな足回り 価格と重量には不満あり

公開 : 2020.08.29 11:50  更新 : 2020.09.05 00:00

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

運動性能的に、M2 CSでは解明すべき疑問がふたつある。ひとつは、M2として最上のステアリングを備えているのか。もうひとつは、M2のなかでベストのハンドリングを発揮するのか。

それは、現行のBMWラインナップにおいて、最高のドライバーズカーの仲間入りをできるか、ということでもある。そうなればもちろん、この掛け値なしにマッチョなFRクーペが、これほどの高価格になって、競合するミドシップ勢にどこまで迫る走りを手に入れたのかも知りたい。

M2 CSはすばらしく俊敏で、1575kgの高性能3ボックスに求める水準をすべて満たしている。それでいて、英国の荒れた道路を、気楽に毎日走れるような扱いやすさも兼ね備えている。
M2 CSはすばらしく俊敏で、1575kgの高性能3ボックスに求める水準をすべて満たしている。それでいて、英国の荒れた道路を、気楽に毎日走れるような扱いやすさも兼ね備えている。    OLGUN KORDAL

最初の問いに対する答えはイエス。その次もイエスだが、サーキットテストができなかったので、あくまで公道でという条件付きで、従来モデルとの差はほんのわずか。そして、ミドシップのライバルに対しては、限りなく肉薄したといえる。

このCSが、E46時代のM3 CSLの再来であってほしいと願うファンも多いだろうが、残念ながらそうでないのは、車名のとおりだ。とはいえ、驚異的にすばらしいドライビングを味わえるクルマである。走らせる甲斐があり、走らせるほどに熱くなれる。

BMWはステアリングに関して、アシストの程度や電動機械式ラックの速さを変えなかった。だが、M2コンペティションに乗り慣れていれば、サスペンションジオメトリーの変更はハッキリわかるだろう。また、ステアリングのレスポンスとフィールは、タイヤを情報伝達の忠実度が高いカップ2としたことで増強された。

タイトなダンピングと、新型ホイールとカーボンセラミックブレーキによるバネ下重量軽減は、貪欲なほどに方向転換するこのクルマの能力を高める。

むろん、そうしたフロントアクスル周りに施されたディテールのすべてが際立つのは、剛結点の多いリアの挙動が精確で、みごとなまでにムラっ気のない、エンジンを思い切り回せるだけのプラットフォームに仕上がっているからだ。

それらが協調し、シャシーは一体となった、確信の持てる挙動を示す。実際、M2 CSは、この手のクルマに想像するであろう整った身のこなしと、ものすごい俊敏さを公道上で披露する。ただし、サスペンションを真に輝かせるには、かなりのスピードと負荷が必要なのだが。

当然というべきか、このクルマにはM2コンペティションのように遊べる側面もある。それを存分に解き放つには、かなりハードに走らせることと、オプションであるハイグリップタイヤのカップ2を履くことが必須ではあるのだが。

リアに搭載したアクティブMディファレンシャルは、トラクションをうまく保ってくれる。しかし、ドライバーが意図的に操縦すれば、それを圧倒するのも容易。また、スピンの兆候が出た際には、徐々に制御してくれる。

純機械式LSDのベストなものに比べれば、伝えてくれる情報量は少なく、予測性にも劣るのは確かだ。それでも、コーナリング初期でアンダーステアを引き起こすことはない。

そうはいってみたものの、繊細さや俊敏さは、アルピーヌA110やケイマンの域に達していない。スロットルオフでのアジャストしやすさに関しても同様だ。

いっぽうで、悪天候時の気まぐれさは当然ながらM2のほうが抑えられている。なにより、ゆったりと運転できる、とげとげしくないツーリングカーを求めているのなら、このBMW一択。アルピーヌポルシェを検討する必要はない。

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