ルノー・クリオ・ルノースポール200 EDC

公開 : 2013.11.28 22:00  更新 : 2017.05.29 19:22

イントロダクション

ルノー・クリオ・ルノースポールほどホット・ハッチのクラス・リーダーとして主導権を握ってきたクルマは数少ない。これまでに登場したすべてのクリオ・スポールがわれわれのオススメするホット・ハッチであった理由は、どれもがエンスージァストにとって夢のようなクルマだったからだ。威勢の良い2.0ℓナチュラル・アスピレーション・エンジンと張り詰めたカップ・シャシーによって速く、軽く、安く、順応性の高いこれまでのクリオ・スポールはハードなドライビングを訴えかけ、通勤を楽しくするのと同様に、容易に夢中になるようなトラックでの本分を発揮できた。

過去15年間、その特大なステアリング・ホイールを握り続けることのできた幸運な人たちにとってクリオ・ルノースポールは悪魔のように完璧なクルマだった。そして、何一つとして大きく変えられることはなかった。

最新のクリオはこれまでルノー・スポールが確立してきたアプローチに対し激しい変化をもたらした。標準のクリオと同様、RS200は今や5ドアしか選ぶことが出来ない。新しいエンジンはダウン・サイズされターボにより加給される。そして、ギア・ボックスはオートマチックとなった。これらの変更は、かつての非行少年を対象としたものから、より幅広い購買層へのアピールすることを見込んで行われたものである。だが、ソフトで賢明となったルノースポールは未だにわれわれの非常に高い期待に応えることができるのだろうか?

デザイン

クリオRS200 EDCには197bhpを発生する1.6ℓターボ・ガソリン・エンジンが搭載され、6速の”エフィシェント・デュアル・クラッチ”ギア・ボックスを介して前輪を駆動する。モデル名末尾のEDCはこのギア・ボックスの頭文字だ。

新しいパワー・トレーンこそが間違いなく以前のクリオに対する最も際立った変更点だろう。6速マニュアルのみと組み合わせられた先代の2.0ℓの自然吸気エンジンは、パワーを発揮するには高回転まで回す必要があり197bhpのピーク・パワーを7250rpmで発生していた。新型はピーク・パワーを6000rpmまでに発生し、重要なことに24.5kg-mのピーク・トルクを1750pmから発生し始める。

スチール・モノコックのシャシーは以前より馴染み深いものとなる。5ドアのみが設定される全長4062mmのボディ・シェルは普通のクリオのものだ。フロントにはマクファーソン・ストラット、リアにはトーション・ビームの足回りを備え、セッティングの異なるスタンダード・シャシーとカップ・シャシーの2種類が用意される。われわれの試乗車は3mm低められたサスペンション、15%レートの高いスプリング、クイックなステアリング・ギア・レシオを持つカップ・シャシーだった。両シャシー共にルノーがRSデフと呼称する電子制御式デファレンシャルが備わり、技術仕様書によればデフよりもブレーキに作用する。フロント、リア共に左右両輪のホイール回転速度の差をモニターし、パワー・デリバリー自体には影響を与えることなく、状況に応じて回転中のフロント・ホイールに軽いブレーキを加える。デファレンシャルにおいても同様に働き、コーナー外側のホイールにより多くのパワーを配分する。RSデフはトラクション・コントロールとスタビリティ・コントロールとは独立して働き、介入を減らしたり完全に切ることも出来る。

インテリア

パドルシフターを求める指先と本来クラッチ・ペダルがあるべき場所にぶら下がった足、RS200にはルノースポールには不似合いな間の悪さがある。リピート客がRS200のキャビンと折り合いをつけるのには少し時間がかかるだろう。マニュアル・ミッションを排除することに関してルノーのやり方ははうまい方法だったと言えるだろう。パドルシフトの他に設けたチープな感じのレバーは、マニュアル・ギアボックスへの憧れに応える確実な方法だ。

基本構造は標準のクリオと同一であるため驚くことではないが、標準のクリオ同様にパッセンジャーを囲む内装は明らかに触れて心地の良いものではない。差別化にはステアリング・コラムに取り付けられたパドルのようなものに注意を払われたようだが、あまりに薄っぺらくいかなる満足感も抱くことは出来なかった。

だが、結論を急がないでほしい。新型クリオは特にパッセンジャーにとって高い居住性を示した。5ドアのスタイリングには衝撃を受けただろうが、リア・シートへのアクセスのためにフロント・シートをよじ登る必要は無くなった。レッグ・ルームは広いにこしたことがないが、ドアの枚数も同様に3枚よりは5枚あった方が良い。そして、RS200は5枚ドアを備えている。

エンスージァスティックなドライバーは、このクラスには珍しくないこととはいえ着座位置が少々高いことに気づくだろうが、標準のスポーツシートは快適でサポート性も良好だ。標準トリムでもスマートフォンを簡単に接続できるBluetoothを備えている。ところが、時間が経つとR-Linkは接続が途切れてしまうことがあり、通話機能に問題は無いのだがメディア再生は出来なくなるのだ。おまけに、適当にボタンを押したりタッチスクリーンを操作しても接続は戻らない。

標準トリムには4x20WのArkamysオーディオ・システムも含まれる。Luxトリムではオーディオは4x35Wとなり、3Dサウンドと呼ばれる機能が付く。オプションのルノースポール・モニター2.0がもたらすエンターテインメントはオーディオよりも遥かに良いものだ。これは車載テレメトリー・システムで、パフォーマンス・データの詳細なことでは日産GT-Rに搭載されているものにも匹敵する。標準トリムに搭載されるナビゲーション・システムはルノー内製のNav’n’Goだが、Luxでは3か月分のライブ・インフォメーション・サービス付きのTomTomのものにアップグレードされる。どちらのシステムも模範的と呼べるものではないし、標準のクリオで感じたものと同じく細かい情報面での不足に悩まされた。とはいえ、そのシンプルさも十分使える程度のものだ。

バイヤーの多くがRSドライブとRSモニターを評価することに疑いの余地はない。この二つの名前はややこしいが、働きは全く異なる。RSドライブの役割はトランス・ミッションとエンジンのマッピングを変更し、スタビリティ・コントロールとトラクション・コントロールの介入度合を調整することだ。RSドライブはノーマル、スポーツ、レースの3段階に切り替えることが出来る。スポーツ及びレースを選択するとエンジンのレスポンスは鋭くなり、アイドル回転数が上昇し、ギア・ボックスの変速スピードはますます速くなりり、パワー・ステアリングは重くなる。

パフォーマンス

旧型の豪快な2.0ℓのエンジンを小排気量のターボ・エンジンに置き換えるというルノーの決断も、クリオRSの持つ気性を著しく変えてしまうのに十分だったろうが、唯一組み合わせられるデュアル・クラッチのオートマチック・ギアボックスは車のキャラクターに根元から変えてしまった。

デフォルトのオートマチック・モードで運転すると、予想通り測られたかのように正確に入力に従い、変なクセもなく他のオートマチック・トランスミッションを搭載した今時のハッチバックのように駆け抜けていく。これはルノーの意図したとおりだ。手軽にスポーティさとコンフォート性を両立する手段として、RSドライブ・システムのボタンを押すことで活発なスポーツ・モードとレース・モードに切り替えることが出来る。

このシステムとギア・ボックスの問題点は二つある。第一に、現行型も同様の心地よさを備えているべきだったのだが、先代までのクリオRSには存在したた腕白なまでの活気が跡形なく取り払われてしまったことだ。飛ばすようなシフト操作によりエンジンのパワー感を味わうことはかつてのクリオの一番粋な楽しみだったが、最新のクリオではマニュアル変速を行っても爽快という言葉からは遠いところにある。このことは二番目の問題にも関係してくることだが、第二の問題はRSクリオの体感する速さは頻繁に物足りなさを感じるのだ。進行中のハイパワー化はクリオのサイズ及び重量面の増加に前もって対応されれいたものではない。そして、装備は増えたが現行クリオはクリオ史上最大となっており、刺激をもたらすことに苦労している。恐らく、使いやすいローンチ・コントロール・システムの存在にもかかわらず、フィエスタSTに対して0-100km/h加速で0.5秒近く遅い事実は、ルノーが更なる進出を測ろうとしているホット・ハッチ市場を失望させていることだろう。

加速性能の指標の一つとしていつも行っている、ギア固定時の加速タイムの比較ではルノースポールのダイナミック性能に関して更に深い衝撃が明らかとなった。本来元気の良い加速を提供するべきなのだが、この条件においてクリオは軽量なSTに対して決定的に劣る。具体例を出すと3速固定での64-96km/h加速では0.7秒、4速固定での80-112km/h加速においては1.4秒遅い。厳しいデータから離れるとクリオが輝く瞬間はあり、6500rpmのレッドライン周辺の気持ちよさもその一つだ。しかし、ここにおいてもオートマチック・ギアボックスはワクワクする感じを与えてくれる追加装備というよりも、変速は速いが楽しみには障害となる。

乗り心地とハンドリング

以前のクリオRSしか知らない人が最新のクリオに乗ると驚くことだろう。かつてのRSクリオの乗り心地は過酷なものではなかったが確かな硬さを持っており、最新のRSクリオでは認識出来ない路面の情報を注意深く、機敏に伝えてくれた。

新型は街乗りではルノー・スポールには思いもよらない、しなやかで大人しい乗り心地を見せる。以前のクリオならボディ全体を揺り動かし、フィエスタSTのキャビンも広範囲に渡って乱すバンプでさえ傍へ追いやる。ステアリングに関しても同じ道をたどっている。小さな入力に対するレスポンスは悪化し、路面の感覚も鈍くなっている。ルノースポールの持つ何らかのマジックが失われたと感じずにはいられなかった。荒れた道でスピードを上げると、これらの疑念はある程度確かめられた。最新型クリオの走破性は高いとしか言いようがない。引き続き同じ路面で運転を続けると、実際路面の傾斜や隆起部、不完全な舗装も楽にクリアし、辺境から辺境へと広大な砂漠の道を高いペースで優雅に移動すること出来る。

サスペンションはホット・ハッチのものとしてはかなり柔軟だ。ブレーキングでは少しノーズがダイブするものの、程よく抑えられている。比較的ソフトなサスペンションに伴う荷重変化によりスムーズさは少し乱れるが、ターンインは十分キビキビとしたものだ。ターン・インをあせり過ぎ、スロットルを開けるとコーナリングのバランスはアンダーステア傾向となる。トレイル・ブレーキングを行いながらコーナーに侵入するとバランスは改善されるが、たいていの場合は前輪駆動らしい挙動を見せる。ロング・コーナーではコーナー内部で生じるリフトにより僅かにニュートラルさが加わるが、それよりも僅かにオーバーステア傾向となる。同じ路面コンディションにおいて以前のクリオやフィエスタSTと同様にテールを振り回そうとするのなら、真剣になって誘発する必要がある。

大抵においてクリオは落ち着きがあり、速く、挙動は整然としている。スタビリティ・コントロールが介在する前でもほとんど大きなスリップは見せない。RSドライブ・モードに入れて運転すると、よりアンダーステアもオーバーステアも大きくすることが出来てスタビリティ・コントロールの介入は緩やかになり、切ることも出来る。粘り強いグリップと高いトラクションによりサーキットでも非凡さを発揮する。高いレベルの敏捷さとバランスはスロットル修正の余地を残している。しかし、フィードバックの一部、レスポンス、そして以前のクリオを素晴らしい一台としていた特徴である完璧な楽しさは残念ながら消え失せていた。

ランニング・コスト

ルノー・クリオ172が登場した1999年末当時は、安い価格で速いクルマを買うことはできないと言われていた。余計な装備のないカップ・シャシーと一緒に購入すると、クリオ172は安さを至上とした格安の闘争者となり肥大化した多くのライバルを打ち負かした。

現在ではルノー以外のメーカーからも同様のモデルが発売されている。フォード・フィエスタSTは実用性ではRS200にかなり劣るものの、エントリー・モデルの価格は大幅に安く、更に優美で格段に楽しい。そしてホット・スーパーミニに関する限りでは、フィエスタSTの持つ長所こそが求められるもの全てだ。プジョー208GTIでさえ最廉価構成ではクリオより安く、コーナー内部での落ち着きこそRSに敵わないものの、ストレートで体感する速さは格段に上だ。

オプション選びに忙しくなると物事は必然的に悪化する。われわれのテストしたクリオには最上級のLuxトリムに18インチ・ホイール、カップ・シャシーと洒落たメタリック・ペイントにより総額は£22,000以上に跳ね上がっており、遥かに速に上に実用性でも優れるフォード・フォーカスST-1と比べても高価だ。RS200の位置付けに関してルノーがどう考えているかに関係なく、ホット・スーパーミニは安いときに最も評価されるものだ。そのため、Luxは無視しても良いトリムとなる。エアコンやオート・ワイパーのような装備を重要視するとしても、格段に安い標準トリムにも付いてくるのだ。

ランニング・コストの比較でもRS200はふるわない。144g/kmのCO2排出量自体はライバルに少し劣るだけだが、フィエスタSTと208GTIに課せられるVED(CO2排出量を基準とした税金)はRS200よりも一段階低いのだ。燃費に関しても少し後ろを行く。15.8km/ℓの公称燃費を謳っているが、エコ・ランの結果達成出来た燃費はフィエスタSTの14.5km/ℓに対してたったの13.0km/ℓだった。

結論

小さく速いクルマに関して言えば、ルノーの歴史はRS200や先代ルノースポール・クリオにはとどまらない。172カップは1999年に登場するや否や愛される存在となったが、後のドライバーの鼓動を高めるクリオのテンプレート確立のヒントとなったゴールドのホイールを履いた傑作、クリオ・ウィリアムズによってルノースポールの歴史はもっと前から栄光に包まれていた。

RS200からルノースポールのバッジを外して、例えばヒュンダイ等のバッジと取り換えた上で世界に向けて公開したとしても、市場からは喜んで迎え入れられることだろう。機敏で、速く、スムーズで高性能なRS200が楽しいクルマであることに異論はない。確かに異論はないのだが、われわれはルノースポールが首位から離された2位であることに慣れていない。また、最新のルノースポールが魅力と楽しさで先代を著しく下回ることにも慣れていない。そして、ホット・ハッチを送り出す全てのメーカーの中でルノースポールを王者としていた要素の幾つかが失われしまったことにも慣れない。代わりに、われわれは研ぎ澄まされた楽しさと同様に快適性に仕立て上げられた、これまでと毛色の異なるクリオを受け入れなければいけない。

われわれの基準でルノースポールを依然良いクルマとして留める長所ではあるが、同時にかすかな失望の念ももたらした。このため、販売中のホット・ハッチの中でベストな選択肢はフィエスタSTのままだ。

ルノー・クリオ・ルノースポーツ200ターボLux

価格 19,995ポンド(288万円)
最高速度 230km/h
0-100km/h加速 6.7秒
燃費 15.6km/ℓ
CO2排出量 144g/km
乾燥重量 1204kg
エンジン 直列4気筒1618ccターボ
最高出力 197bhp/6000rpm
最大トルク 24.5kg-m/1750-5500rpm
ギアボックス 6速デュアル・クラッチ

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