【EV版は、無理せず選べるのか?】フランスの電気自動車 DS 3クロスバックEテンス試乗 

公開 : 2020.12.30 21:45  更新 : 2022.04.23 11:57

仏DSの電気自動車SUV、「DS 3クロスバックEテンス」は、現実的に選べるEVなのでしょうか。300kmオーバーの航続可能距離、手厚い補助金。実車に試乗して考えました。

どんなクルマ?

text:Hiromune Sano(佐野弘宗)
photo:Masanobu Ikenohira(池之平昌信)

欧州では厳しい排ガス規制によって、次々と量産電気自動車(EV)が登場しているが、EV化の波がさほど急激ではない日本市場には、今のところその一部が上陸しているにすぎない。

そんななかで、このDS 3クロスバックEテンスを筆頭にプジョーe208、同じくプジョーe2008といったグループPSAが手がけるEVは、いま日本で手に入るもっともコンパクトで手頃なEVの1つといえる。

グループPSAの先進機能は、このDSブランドから導入されていく。それが形になって表れたのが100%電気自動車のDS 3クロスバックEテンスだ。
グループPSAの先進機能は、このDSブランドから導入されていく。それが形になって表れたのが100%電気自動車のDS 3クロスバックEテンスだ。    池之平昌信

これらのEVにおいて、グループPSAは“パワー・オブ・チョイス”というキーワードを掲げる。そのココロは「EVはニーズや生活スタイルに応じて、ガソリンやディーゼルと平等に、そして自由に普通に選ばれる存在であるべき」というものだ。

そんな思想に沿って開発されたDS 3クロスバック、208、そして2008の3車種は、日本国内でもガソリン仕様とEV仕様が普通に並列ラインナップする。しかも、このEテンスにも1.2Lガソリンターボと同じく、“ソーシック”と“グランシック”という装備グレードが用意される。ただし、安価なソーシックは注文生産あつかいだ。

そんなDS 3クロスバックの基本骨格となるのは、208や2008同様にB~Cセグメントを想定した“CMP(コモン・モジュラー・プラットフォーム)”であり、そのCMPはEV版である“eCMP”というバリエーションと同時開発された。

エンジンを積むCMPとEV仕様のeCMPは混流生産が可能で、その生産比率は需要に応じて柔軟に変更できるのが大きな売りとなっている。

見た目、ほぼ同じ 車内は?

Eテンスといっても、見た目も基本的にはガソリン版のDS 3クロスバックそのまま……なのがパワー・オブ・チョイスの意図的な特徴なのだが、今回の試乗車のクリスタルパールを含めたいくつかの専用ボディ色や、繊細なサテンクローム仕上げの外装メッキ部品、そしてホイールやエンブレム類もEテンス専用デザインとなる。

こうした工夫から、Eテンスならではのオーラもなんとなくただよう。

DS 3クロスバックEテンス・グランシックの前席内装
DS 3クロスバックEテンス・グランシックの前席内装    池之平昌信

ダッシュボードにあしらわれた白いソフトクッションが“らしい”インテリアだが、システム起動ボタンにはガソリン版と同じ「ENGINE START/STOP」と表示されるのは、ちょっと笑った。

確かに、こういう部分で専用部品を起こすのは意外にコストがかかるものだ。

ただ、クルマ本体としての使い勝手にはeCMPの効能が明らかだ。合計50kWhという日産リーフに匹敵(40~62kWh)する大容リチウムイオン電池は、前後シート下に巧妙に分散搭載されており、目に見える部分のフロア高はガソリン版と変わりない。

細かく意地悪に観察すれば、フロントシート下に盛り上がりがあって前席で足を引くと当たってしまったり、荷室床下のスぺタイヤ収納空間がなくなっているといった、ガソリン版とのちがいはある。しかし、日常的に使う部分の実用性や使い勝手はガソリン版とほぼ同じだ。

記事に関わった人々

  • 佐野弘宗

    Hiromune Sano

    1968年生まれ。大学卒業後、ネコ・パブリッシング入社。カー・マガジン等で編集作業に携わるうちに3年遅れで入社してきた後藤比東至と運命的な出逢いを果たす。97年、2人でモンキープロダクションを設立するべく独立。現在はモータージャーナリストとして「週刊プレイボーイ」「AUTOCAR JAPAN」「○○のすべてシリーズ」他、多数の雑誌、ウェブ等で活躍中。

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