【ガルウイングの2台】デロリアンDMC-12とブリックリンSV-1 理想と現実のギャップ 前編

公開 : 2021.02.27 07:05

銀幕のスターになったデロリアンと、知る人すら少ないブリックリン。未来のスポーツカーを夢見て誕生した、ガルウイングの2台をご紹介しましょう。

もくじ

ガルウイング・ドアとステンレス・ボディ
安全で安価なスポーツカーを目指して
スバル360の販売で得た経験を展開
ジウジアーロとロータスの協力

ガルウイング・ドアとステンレス・ボディ

text: Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
photo: Will Williams(ウィル・ウイリアムズ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

どんより曇った英国の冬。通りを歩く人の姿はほとんどない。ロックダウンされた街は、建物さえ冷たく感じる。ブラインドが下ろされ、ドアがロックされた高層ビルの間を風が吹く。

そんな景色を一変させるように、エンジンノイズが聞こえてくる。フォード・ウインザーV8エンジンと、PRV、通称ドゥヴランV6エンジンの唸り声が、コンクリートの谷間で反響する。冷え切った気持ちを温めてくれるのに、不足ないサウンドだ。

デロリアンDMC-12(1981〜1982年)
デロリアンDMC-12(1981〜1982年)

デロリアンとブリックリンが路肩に止まると、どこからともなく人が集まり、興奮するように眺めていく。こんな反応があるクルマは、そう多くはない。だれもが笑顔を浮かべ、奇抜なデザインをスマートフォンのカメラで収めていく。

デロリアンは、銀幕で大金を稼いだ。ハリウッド映画、バック・トゥ・ザ・フューチャーのおかげで、クルマに興味を持たない人でも特別なモデルだとわかってくれる。

子供も年配の女性でも、エンブレムを確認する必要はない。トレードマークといえるガルウイング・ドアとステンレス製のボディを見れば、記憶のなかのモデル名が頭に浮ぶ。

隣に並ぶもう1台は、見慣れない人も多いはず。真っ白なウェッジシェイプのスポーツカーは、映画スターが乗っているようなクーペに見間違える人もいるだろう。デロリアンの名前をDMC-12まで知る人でも、ブリックリンSV-1を初めて見る人は少なくない。

安全で安価なスポーツカーを目指して

ブリックリンは英国に限らず、北アメリカ大陸でも珍しい。デロリアンと見た目は近いものがあるが、クルマの成り立ちも誕生した時代も異なる。

ロンドンから北に80kmほど離れた、ミルトン・ケインズの街はこの2台にふさわしい。過密な都市部での生活を変えるために計画された、1960年代のニュータウン。このクルマは、そんな未来の街での暮らしを前提にデザインされている。

ブリックリンSV-1(1974〜1976年)
ブリックリンSV-1(1974〜1976年)

もちろん、理想と現実は異なる。ミルトン・ケインズが描いたような明るい未来は、悲しいことに今も実現していないようだ。

未来の理想像という点で、デロリアンMC-12とブリックリンSV-1は共通している。高い理想を掲げながらも、ここまで大きく目標に届かなかったクルマも珍しい。

クルマの安全性に強く関心を寄せた男、マルコム・ブリックリン。ドライバーや同乗者の幸福を、手頃なお金で買えることを目指した。パッケージングが成功していれば、事故で負う怪我を大きく減じる可能性もあった。

デロリアンの夢も遠からず。耐久性の高い、安全なスポーツカーを作ることを狙っていた。使い捨て文化へ逆らうように、陳腐化しにくいデザインをまとい、腐食しにくい素材でボディはできている。

ジョン・デロリアンの波乱の人生は、クルマ好きならご存知の方も多いだろう。だが、マルコム・ブリックリンも負けていない。ブリックリンなら、アメリカ3大自動車メーカーに勝てると考えた人もいたほど。

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