【ジープ/フィアットで攻めの経営】ステランティス日本法人代表 販売台数2倍にした凄腕とは?

公開 : 2021.07.06 05:45  更新 : 2021.10.09 23:41

販売台数の伸び ディーラー網拡充が理由

驚異的なまでのジープの販売台数の伸び。

その理由はいくつもあるだろうが、大きいにはヘグストロム氏の元で進められたディーラー網の拡充だ。

ジープ販売店(写真はジープ藤沢湘南)
ジープ販売店(写真はジープ藤沢湘南)    ジープ藤沢湘南

ジープを販売するクライスラー/ジープのディーラー網は2013年の時点で日本に61店舗あった。

しかし、8年後の現在は80店舗にまで増やしている。

しかも、2016年からはディーラー店舗にCIを導入。順次、全国のディーラーを新CIに則ったスタイルでリニューアルしている。

2021年になってからも、ジープ盛岡、ジープ藤沢湘南、ジープ長崎をグランドオープン。ジープ三重をリニューアル・オープンさせている。こうした地道な努力が奏功したのだろう。

また、毎年のような新型車が日本に導入されたのも好調さの理由の1つだ。

振り返れば、ジープは、2013年の新型グランドチェロキー、2014年の新型チェロキー、2017年の新型コンパス、2018年の新型ラングラー、2020年のレネゲード4xeと、次々に新型車が登場している。

2019年こそ新型車はなかったけれど、それでもマイナーチェンジしたレネゲードを投入。さらに毎年、数多くの限定モデルを販売している。

運も実力のうち SUVブームが後押し

続々と新車が登場したことは、日本法人社長としての実力ではなく、「運がよかった」という側面もある。

実際に、過去10年ほど世界的にSUVはブームと呼べる状況で、世界中の自動車メーカーが新型 SUVを数多く投入している状況であった。

日本に導入されているコンパクトなジープ「レネゲード/レネゲード4xe」
日本に導入されているコンパクトなジープ「レネゲード/レネゲード4xe」

そうした流れに上手に乗ることができたのが手柄といえるだろう。

そうしたSUVブームとは逆の動きもある。

それが厳しくなる一方の燃費規制だ。燃費を向上させるには、トヨタプリウスのようなハイブリッド化が欠かせない。

日本では、そうした燃費規制が厳しくなるほどに、ハイブリッド車の販売が伸びている。

そして、そうした燃費向上を最も苦手とするのが大型SUVである。

つまり、ジープにとって燃費規制は逆風となる。しかし、現実のところジープには、その影響は見受けられない。

その理由は、「まだまだジープがマニアックな存在である」というのも大きいだろう。

現状では、燃費規制を気にする人よりも、ジープの強い個性を好む人が多いということなのだろう。

もっと、ジープが売れていて、多数派になっていれば、燃費規制はマイナスに響いたのではないだろうか。そういう意味でも、小さな規模のうちに燃費規制の逆風が吹いたのもラッキーといえるだろう。

SUVブームに乗って続々と新型車が登場し、それを追いかけるかのように販売網を充実させた。新車と販売網という2つの相乗効果が4倍以上という成長の理由といえるだろう。

多彩なブランド武器に独1強に挑む

ペンタス・ヘグストロム氏が率いるステランティスは、他とは異なるユニークな特徴を持つ。

それが多様性だ。

ポンタス・ヘグストロム氏
ポンタス・ヘグストロム氏    FCAジャパン

アメリカのジープとクライスラー、イタリアのフィアットアバルト、アルファロメオ、さらにフランスのプジョーシトロエン、そしてDS。

しかも、近くオペルも追加される予定だ。アメリカ、イタリア、フランス、ドイツと4か国で9つものブランドを扱うことになる。

本来、輸入車というのは、メーカーや国ごとにある多様性を楽しむもの。

ところが近年の日本市場における輸入車といえば、ドイツが圧倒的な人気を誇っていた。そんな状況もステランティスの輝き次第では、変化することもあるだろう。新代表の辣腕に期待したい。

記事に関わった人々

  • 鈴木ケンイチ

    Kenichi Suzuki

    1966年生まれ。中学時代は自転車、学生時代はオートバイにのめり込み、アルバイトはバイク便。一般誌/音楽誌でライターになった後も、やはり乗り物好きの本性は変わらず、気づけば自動車関連の仕事が中心に。30代はサーキット走行にのめり込み、ワンメイクレースにも参戦。愛車はマツダ・ロードスター。今の趣味はロードバイクと楽器演奏(ベース)。

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