ACシュニッツァー ACS3スポーツへ試乗 ベースはG20型M3 590psと76.3kg-m

公開 : 2022.01.12 08:25

一層磨きが掛かったボディの動き

大幅にトルクが増強された後輪駆動のM3を味わうのに、湿った路面は理想的な環境ではない。それでも、ACシュニッツァー社のチューニングは、想像以上に機能しているように思えた。正直いって、素敵だ。

ボディの動きには、一層磨きが掛けられている。M3より上位グレードの、ハイパフォーマンス・モデルで感じられるような洗練度がACS3スポーツには備わっている。鋭いものの、当たりが柔らかい。

ACシュニッツァー ACS3スポーツ(欧州仕様)
ACシュニッツァー ACS3スポーツ(欧州仕様)

試乗したドイツ・ラインラットの一般道を、息を呑むスピードで走破する。路面変化に悪影響を受けず、タイヤが跳ねたり接地感が失われるようなこともない。軽快でありながら、自信を抱かせてくれるような確実な追従性を獲得している。

コーナリング・グリップも期待以上。ステアリングホイールは、少し反応が過敏すぎるかもしれない。

基本的には極めて落ち着いており、標準のM3と直接に乗り比べなければ、明確な差は感じ取れないだろう。それでも、ACシュニッツァーが従来以上の操縦性と繊細さを与えたことは間違いない。

ベースとなったBMW M3は6速MT。シフトレバーの動きは正確で、ストロークはショート。ネイルアートをしたような指先でなければ、クイックに変速できる。英国へ導入されないのが残念だ。

試乗ルートの路面は、美しく平滑に舗装されていた。僅かに乱れた区間を通過た印象では、安定性や上質な乗り心地が簡単には失われないことも、確かめることができた。リアタイヤは、扁平率30という薄さだけれど。

有り余るほど豊かな動力性能

動力性能は、常に有り余るほど豊か。恐らく、ほとんどのドライバーが必要とする以上に。実際、英国や日本の一般道を運転する限り、チューニングECUやエアロキットの効果は体感できないかもしれない。ノーマルのM3も極めて速い。

アクセルペダルを空いたアウトバーンで踏み込むと、ACS3スポーツは簡単に280km/hを超えてみせた。だが、われわれが住む国では、こんな速さは現実的なものではない。

ACシュニッツァー ACS3スポーツ(欧州仕様)
ACシュニッツァー ACS3スポーツ(欧州仕様)

一方で、品の良い乗り心地のRSコイルオーバー・キットと鍛造ホイールは、一考の価値がある。磨かれた操縦性を気持ちよく楽しみたいというドライバーにとって、有用なアイテムになるだろう。

安いとはいえない金額や、エアロキットの見た目は、すべての人を喜ばせるものではないとはいえる。しかし、業界最高峰のチューナーが手掛けたマシンとして、仕上がりは出色。アグレッシブな容姿を裏切るほどに。

ACシュニッツァー ACS3スポーツ(欧州仕様)のスペック

英国価格:約11万ポンド(約1705万円)
全長:4805mm(標準M3)
全幅:1905mm(標準M3)
全高:1435mm(標準M3)
最高速度:289km/h
0-100km/h加速:3.8秒
燃費:9.7km/L
CO2排出量:236g/km
車両重量:1705kg
パワートレイン:直列6気筒2993ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:590ps/6500rpm
最大トルク:76.3kg-m/3500-4500rpm
ギアボックス:6速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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